エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 「そういえば、病院の近くにある創作和食の店知ってますか?あそこの料理どれもめちゃくちゃ美味しんですよ!」

 「それって病院でてすぐ角を曲がったところにあるお店よね?
 この間優茉ちゃんと行ったわよ。珍しいお料理も多かったけど、たしかに美味しかったわね!」

 「はい、どれもとてもおいしかったです!」

 「あの時の優茉ちゃん本当可愛かったわぁ。まぁ私のせいで飲ませちゃって、帰ってから健吾にも怒られたけどね」

 てへっと笑う天宮さんがおかしくて笑っていると、「えー!いつですか、それ!可愛かったってどういう事ですか!?」ともぐもぐしながら大きな声をだす風見さん。

 「ふふっ、内緒よねー?」

 「えー!いいなぁ、僕も行きたかった...」

 「だーめ、男子禁制よ!それに風見くん、あなた今まで何してたのよ?もうすっかり手遅れよ?」

 「えっ!? どういう事ですか!?」

 「そのままの意味よ。もう少ししたらわかるはずだから、潔く諦める事ね」

 「えっ...マジですか? いや、でもまだ指輪してないし、まだ僕にも可能性は残っているんじゃ...」

 よくわからない二人の会話を聞きながらお弁当箱をしまうと、スマホに柊哉さんからのメッセージが。

 今日もお弁当ありがとう、美味しかったよという内容。これも最近変わった事の一つ。以前よりも連絡などのメッセージが増えた。

 今日は早めに食べられたんだなぁとか、帰りの時間もこまめに連絡してくれるのは嬉しいからいいんだけれど、やっぱり何か気を使わせてしまっているのかな...?


 「天宮さん、そろそろ時間なので戻りましょう?」

 「そうね!じゃあ風見くん、お先に」

 病棟まで戻る途中、遠くに柊哉さんの姿が見えた。もちろん私には気づかずすぐにエレベーターに乗って行ってしまったけれど、こうやって遠くから彼の姿を見るのが密かに楽しみだったりする。
 白衣姿や家では見せない仕事モードの表情は、いまだにドキッとしてしまう。
 

 そして午後からの仕事も夕方には目処がつき、看護師さんのお手伝いにまわった。
 倉庫での備品の確認や発注作業を終えると、頼まれていた検査のお手伝い。使い終えた器具の後片付けや洗浄作業をして廊下に出ると、後ろからきた風見さんに声をかけられた。

 「ありがとう、宮野さん!いつも助かるよ!
 そうだ、お昼に言ってた創作和食の店、今度は一緒に行かない?話をしてたら、あそこの揚げ出し豆腐が食べたくなってきちゃって」

 「いいですね、私も食べてみたいです」

 「じゃあさ、今日とかどう?予定あった?」

 「今日ですか?」

 うーん、特別予定はないけどいいかな?柊哉さんに聞いてみないとだけど、きっとダメとは言わないよね?

 「じゃあ、天宮さんも誘いましょう!旦那さんは昨日から学会のため出張中らしいですから」

 「うーん、二人じゃダメ?」

 「え? 二人でい—」

 「だめ」

 私の言葉を遮るように、急に後ろから低い声が聞こえ驚いて二人で振り返る。
 するとそこには、タブレットを片手に鋭い視線を送るスクラブ姿の柊哉さんが...

 「っえ? 香月先生!?」

 驚きの声を上げる風見さんに構わず私の腰を引き寄せながら「優茉は今日俺と帰るからダメだ」そう言い放つとそのまま彼に押され、来た道を戻される。

 「えっ、あ、あの、先生⁈」

 振り返るとポカンと口を開けたまま呆然とこちらを見ている風見さんの姿が...。
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