エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
乱れた心拍と顔の赤みをなんとか落ちつかせてから、急いでナースステーションへ戻った。
そこに風見さんの姿はなかったけれど、驚かせてしまったし今度謝っておかないと...。
「優茉ちゃん、顔赤いけど大丈夫?もう大体終わったし先に上がっても平気よ?」
「大丈夫です!」とだけ伝え、明日の業務の確認などを終えると、ロッカー室で着替えを済ませる。
歩きなら天宮さんと途中まで一緒に帰るけれど、今日は柊哉さんが待っているので挨拶をしていつもと反対方向に歩き出した。
でも...さっきの雰囲気がなんとなく気まずくて、足取りは重たい。
はぁ、柊哉さん怒っていたのかな...?でもどうして?風見さんと天宮さんと食事に行くのはダメだった?
この間も酔っ払って迷惑かけちゃったから?
ああ、今日は柊哉さんも早く上がれるからタイミングが悪かったのかな?
考えながら歩いているとあっという間に駐車場まで着いてしまい、私に気づいた彼が運転席から降り、いつものように助手席のドアを開けてくれる。
ちらっと顔を伺うと、先程までの鋭い視線は消え幾分柔らかい表情にはなっているけれど、まだお家モードの顔では無い...。
「あの...、さっきは、すみません。 怒って、ますか...?」
車はマンションへと走り出しても彼は無言のまま。それに耐えきれず、私からそうきり出す。
「いや、俺の方こそごめん。優茉に怒っているわけじゃないから、そんな顔しないで」
「そう、なんですか...?」
それ以上聞くことは出来ないまま、車はマンションの地下駐車場に停車する。怒っていないと言っていたけれど、まだ雰囲気は穏やかではない。
つい顔色を伺うようにしてしまうと「優茉、そんな怯えた顔しないで?俺は怒っていないから。ただ、みっともなく彼に嫉妬している自分にイラついてしまっただけなんだ」と優しく頭を撫でられる。
「...彼? 嫉妬...?」
「優茉は気がついていないかもしれないけど、風見くんはデートに誘っていたんだよ」
「っえ? デ、デートですか...?」
「男女が二人きりで食事に行くんだから、デートだろう?それに、最近よく彼といるところを見かける。俺にはわざと優茉に近付いているようにみえた」
「そ、そうなんですか?たしかに最近、休憩が一緒になる事が多いなぁ、とは思っていましたけど...」
「西棟の二階のベンチ。そこで二人並んで弁当を食べていただろう?」
「え...?どうして知っているんですか?」
「たまたまそっちに用があって通りかかった時に見かけただけだよ。なんでこんなひと気の無い所で二人でいるのかって、気になって仕方なかった」
「私は時々あそこで食べていて、あの日は偶然風見さんが通りかかったって...」
「本当に偶然だと思う?コンビニで買い物してきたのに?」
...確かにコンビニは西棟とは反対方向にあり、かなり距離がある。
じゃあ、二人で食事にと誘ってくれたのは、本当にそういう意味だったの...?