エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
今日はあまり遠くへは行けないので、車で近くのショッピングモールにある本屋さんに来た。
柊哉さんは医学書籍のコーナーに居るので、私は小説や雑誌などウロウロと見て回る。
久しぶりに二人でお出かけが出来て、しかも本屋さん。正直少しだけ身体は怠さが残っているけれど、気分はとても良くワクワクしていた。
雑誌と小説を二冊づつ選んで彼の元にもどると、真剣な顔で海外の医学雑誌を読んでいる。
「ああ、優茉。決まった?」
「...はい。柊哉さんは?」
「俺も欲しいのがあったよ。これ、カナダにいた時にお世話になった教授が書いた物なんだ。俺も少し手伝っていたから、気になっていて」
すごい...。最近少し忘れかけていたけれど、柊哉さんは脳神経外科の世界では海外でも知られている名医の一人。
やっぱりとんでもなくすごい人なんだよね...。本来なら私なんかとは住む世界も違うはず。本当にこんなすごい人が私の旦那さんになるの...?
「優茉? ごめん、待たせたから疲れちゃった?」
「い、いえ!大丈夫です!」
「じゃあ、これ買って出ようか?」
ぼんやりとそんな事を考えてしまい、少し寂しくなってしまったけれど、私が持っていた本を取って手をぎゅっと繋いでもらうと少し安心できた。
改めて彼はみんなのものなんだと当たり前のことを実感すると、無性に独り占めしたい欲求に駆られる。
昨日は彼を独り占めした気になったからかな...?どんどん欲張りになっている気がして、自分が怖くなる。
「どうしたの、優茉?」
会計を終えた彼に顔を覗き込まれて、ハッと我にかえった。
「あ、いえ。本、ありがとうございます」
「疲れたなら帰ろうか?見たいところある?」
今はそんな事を考えても仕方ないし、一緒にいられる時間を大切にするべきだよね。
気を取り直し改めて彼の手をぎゅっと握って、雑貨屋さんや食品コーナーを見てまわった。
途中、お気に入りの紅茶専門店で期間限定のジェラートが販売されているのを見つけ、思わず足が止まる。
「アイス? 食べたい?」
うーん...食べたいけど、朝も甘ーいフレンチトーストをいただいたし、さすがに太っちゃうかなぁと迷っていると...
「俺も気になるから半分にしよう?」と買ってきてくれて、結局彼は三口ほどでほとんど私が食べてしまった。
「ふふっ、本当に甘いものが好きだね、優茉は。美味しそうに食べてるの可愛いから、もっと食べさせたくなる」
ショッピングモールのベンチで聞くには甘すぎる言葉に、途端に恥ずかしくなる。
「でも、朝もフレンチトーストたくさんいただきましたし、さすがに太っちゃいますね」
照れ隠しにそう言うと、彼の手がスッと軽くウエストラインを撫でた。
「いや、優茉はもっと食べたほうがいいよ。前から思ってはいたけど、ウエストも足も想像より細かった」
えっ...? 想像よりって...?
照れ隠しのつもりが、さらに顔を赤くさせる結果になってしまった。