エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 洗い物を始めると、今度は後ろから抱きしめられ顔を覗き込まれる。

 「優茉、何考えてるの?俺には言えない?」

 「あ、えぇっと...」
 
 どう言ったらいいか分からず言い淀んでいると、耳や首に唇を落とし始める。

 「っん...、柊哉、さん、くすぐったい」

 身体を捩っても腕の力が強まるだけで、離してくれない。私が黙っていると、耳を甘噛みしたり舌を這わせたり、徐々にエスカレートしていく。

 「優茉が言ってくれるまでやめない」

 そう耳元で囁いてから、鎖骨まで舌を這わせてくる。

 「あっ、だ、だめです。食器、落としちゃう...」

 「じゃあ、言う?」

 見つめ合ったまま数秒の沈黙が落ち、私が先に目を逸らすと、今度はお腹に巻きついていた手がニットの裾から侵入してきた。

 「っ、待ってください!い、言いますから...」

 泡だらけの手だったのに、思わずエプロンの上から彼の手を押さえてしまった。

 「じゃあ、聞かせて?」

 ニコッと笑っているけれど、時々出る柊哉さんの強引さは、全く選択肢を与えてくれない...。


 何て言ったらいいのか分からなかったけれど、観念してこのモヤモヤとした心のうちを一つずつ話し始めると、なぜか彼はニヤッと口角を上げる。

 「優茉は俺がまた彼に嫉妬して怒っていると思ったんだ?」

 「...違うんですか?」

 「二人が話しているのを見かけたのは偶然だったし、そんな怖い顔して見ていたつもりはなかったんだけど。
 俺は優茉がキョロキョロしていたから、どうしたのかなって思っていただけだよ?」

 「えっ、そうだったんですか...? 今日一日中その事が頭に引っかかっていたんです...」

 「じゃあ、今日は一日中俺の事を考えてくれていたんだ?」
 
 「今日だけじゃありません!ずっと柊哉さんの事しか考えてません!」
 
 私の勝手な勘違いだったと分かり、真剣に悩んだのに...と少し不貞腐れて勢いよく言ってしまった言葉は、よく考えるとすごく恥ずかしい言葉で...

 「あっ、えっと、」

 気づいた時にはもう遅く、俯いた顔を覗き込んでくる彼の瞳には熱が宿っている。

 「そんな可愛いこと言われたら、我慢できないよ?」

 「そ、そういう事じゃ...。あ、まだ洗い物終わってませんし、お風呂にお湯も入れなきゃ」

 なんとなく今日はこのまま流されたくなくて、そう言ってみたけれど...

 「じゃあ、俺はお湯入れてくるから優茉が終わったら一緒に入ろう」

 やっと離れてくれたけど、今なんて...?

 「えっ?一緒にって...?」
  
 「え?今のは一緒に入ろうって誘ってくれたんじゃないの?」

 ニヤッと少し意地悪な顔でとぼけたフリをする彼。

 「そ、そんなつもりじゃ」

 「ダメ?」

 そ、その言い方は、ずるい...。
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