エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
実家に帰ってきてから三週間ほど経ち、明日は私の二十八回目の誕生日を迎える。
案の定、事前に連絡せずに帰った私を少し驚きながらも笑顔で歓迎してくれた二人。
おじいちゃんには「香月さんはどうした?」と度々聞かれたけれど、私の表情で何かを察してくれたらしいおばあちゃにいつも咎められていた。
私を元気付けるように、おばあちゃんは毎日お料理をたくさん作ってくれ、お弁当まで用意してくれた。
さすがに申し訳ないと断ったけれど、どうせお店に出す分を作るのだからと言われ、甘えてしまっている。
本格的な花粉シーズンに入り、外を歩く時は完全防備で出ていても、この時期は寒暖差もあり体調があまり良くない。
それでも、仕事は休む事なく通えているし、通勤時間は長くなったけれど、麻美の家とは近くなったので時々食事に行っている。
彼女には今の状況を話しているので、心配していつもよりも頻繁にメッセージをくれ、明日の誕生日も麻美がお祝いしてくれると言う。
実家にいる間は、二人の明るさに心は少し紛れているけれど、ふとした時に考えてしまうのは柊哉さんのこと。
先日、誕生日も命日のお墓参りも一緒には行けないとメッセージが来ていた。
わかっていたけれど...、やっぱり寂しくて、布団をかぶって気が済むまで泣いた。
考えたくはないけれど、やっぱりこのままもう一緒に居られなくなったと言われたら...
仕事も辞めなくちゃいけないよね。もう彼の病院では働けないし、顔を見るだけでも辛くて仕方ない。
翌日の誕生日は、朝からハイテンションで二人に祝ってもらい、朝食もお弁当も私の好物ばかり。
いつも栄養バランスをとても気にしてくれているけれど、今日はそんな事など気にしないとばかりに、とにかく私の好物だけを作ってくれた。そんな二人に自然と笑う事ができ、うじうじせずに仕事もしっかりこなせた。
天宮さんも、もちろん柊哉さんが白河病院に行っている事や例の噂も知っているので、私の元気がないのはそのせいだろうと心配してくれている。
食事に誘ってもらったり、この間はお家に招いてもらい、お休みだった天宮先生が作って下さった料理を三人で頂いた。
柊哉さんの事を考えない日などないし、その度に寂しくなったり落ち込んだりしていたけれど、日々周りの人達の優しさで、私はなんとか持ち堪えていた。