エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
夢のようなひと時を過ごし、様々な書類の名義変更をしているうちに、少しずつ結婚したことを実感してきた。
そして連休明け、朝の申し送りの最後に少しだけ時間を頂いて、柊哉さんが結婚した事を自ら発表した。
噂は本当だったんだと少し騒つき「お相手は?」という質問に、彼は私の所まできて手を掴み前に出ると肩を抱きながら
「彼女が私の妻です。彼女の意向もあり今後も旧姓の宮野のままですが、私の最愛の妻だという事をお忘れなく」
まるで周りを牽制するかのように、仕事中のクールな視線で少し語気を強める。
そのおかげもあり、私が前に出た時の皆さんの驚きで止まっていた空気が動きだし、うんうんと頷いてから次第に拍手と「おめでとう」の声が聞こえてきた。
彼が私の手を取った時は、全員の視線が集まり心臓が止まりそうなほど緊張したけれど、祝福の声に少し息が出来るようになった。
申し送りの後、彼はすぐにナースステーションを出ていき、それを見計らったように看護師さん達に囲まれ少し焦ったけれど...
「宮野さんおめでとう!全然知らなかったわよ!どうして教えてくれなかったの⁈ 宮野さんなら納得ね、美男美女で目の癒しだわぁ!さすが香月先生!見る目があるわね」と口々に言われ拍子抜けした。
また前のように敵意を向けられたら...とずっとドキドキしていたけれど、予想外の祝福ムードに心から安堵した。
その後噂は瞬く間に広がり、お昼休憩には元同僚の受付事務の皆さんにも囲まれてしまったり、しばらくは食堂や廊下でも視線を感じる事は多かったけれど、少し経てば無くなるはずとなるべく気にせずに過ごした。
それに、ちゃんとそれを柊哉さんもわかってくれていて、わざと人前で私の事を名前で呼んだり頭を撫でたり、朝も帰りも気にせずに堂々と手を繋いで歩いてくれる。
きっと全部、私を守るためにやってくれていること。
最初は少し恥ずかしかったけれど、ひと月も経てばそれが当たり前になり、周りも慣れてくれたようで今ではほとんど視線も感じなくなった。
そして、柊哉さんと話し合い少しずつ結婚式の準備も進めている。
彼の立場上、大きな披露宴になる事は間違いないので、まだ先の事だけれど今から想像しただけで緊張してしまう。
その反面、挙式は別にして私の希望を叶えてくれるかたちになったので、今からわくわくしている。
式場探しもドレス選びも忙しい中彼も一緒に決めてくれて、優柔不断な私にとってはとても心強かった。