エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
六月に入りどんよりとした曇りの日も多く、ジメジメとした空気に梅雨入りも間近だと感じる。
金曜日の今日は、仕事が終わったら柊哉さんのご友人達と食事をする事になっている。
色々とあった時に心配をかけた事もあり直接結婚を報告すると共に、親友達には紹介しておきたいと言ってもらい、私も参加する事になった。
柊哉さんは相変わらず忙しく、今日も朝からオペが立て込んでいた。
迎えに行くと言われたけれど、着替えを済ませてもまだ姿がなかったので医局を覗いて見ると、橘先生に声をかけられる。
「ああ、宮野さんお疲れ様。旦那様はもうすぐ戻るはずだよ、中で待っていたら?」
そう言われ、他に先生方もいらっしゃらなかったので、お言葉に甘えて奥のソファで待たせてもらう事にした。
「新婚生活はどう?上手くいってる?まぁあれだけ溺愛している所を見せつけられたら、ラブラブなのはよく伝わってくるけど」
「い、いえ、溺愛なんて...」
「ははっ、どう見ても彼が惚れ込んでいる様にしか見えないよ。
まぁ院長も喜んでいたし、彼のおじさん的な立場の僕としても、幸せそうで何よりだけどね。
それに、もっと前から一緒に住んでいたんだろう?毎日お弁当を作ったり彼の為に自己犠牲を払ったり、献身的な良い子なんだろうなぁと思っていたけど、宮野さんだと知って納得したよ」
「えっ? 知って、いたんですね...」
「ああ、少しだけね。お弁当を作ってくれる彼女が出来たんだと安心した矢先、家を出て行ってしまったと聞いて心配していたんだよ。
相手が誰かとは聞いていなかったけど、きっと近いところにいるんだろうなぁとは思っていたしね」
「橘先生、優茉に何の話をしているんですか?」
気がつくとすぐ後ろに柊哉さんが立っていた。
「ああ、おかえり。中野さん落ち着いた?」
「はい、このまま様子を見て大丈夫かと」
「そう、よかった。じゃあ、新婚さんは仲良くお帰り下さい」
「優茉、待たせてごめん。着替えて来るからもう少しだけここにいて。
橘先生は余計な話しないで下さいよ」
「ははっ、宮野さんにはカッコつけたいんだね。
僕が言うことでもないけど、彼は昔から繊細なやつだから。心も大事にしてあげてね?」
そう言い残して橘先生も出て行ってしまった。
少しして柊哉さんが戻ってきて、一緒に駐車場へ向かう。
「優茉、体調が良いなら少しは飲んでもいいけど、絶対飲み過ぎないようにね?」
「はい、軽めのものを一杯だけにしておきます」
向かう先は、三人の行きつけのバー。
そういう所は初めてだし、せっかくならおしゃれなカクテルとか飲んでみたいなぁと少しわくわくしながら車に乗り込んだ。