エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 「優茉、午後から出掛けられそう?二日酔いとか身体は大丈夫?」

 「はい、今のところ大丈夫そうです」

 今日は珍しく柊哉さんが完全なオフなので、二人で結婚式の打ち合わせに行く予定だった。

 「じゃあ、昨日連絡があって指輪も出来たそうだからそれも受け取りに行こう。気分悪かったりしたらすぐ教えてね?」

 「はい、楽しみです」

 彼が作ってくれたブランチを食べ終え、二人で協力して片付けやお掃除などを済ませる。
 少しだけ頭痛があるので一応常備している鎮痛剤をカバンに入れ、丈が長めのワンピースに着替える。半袖丈なのでカーディガンも羽織り、首の跡も見えないように今日は髪の毛も下ろした。

 手を繋いでエレベーターに乗り込んだ時、ふと気がついた。なんか、柊哉さんの香りがいつもと違うような...
 不思議に思い、つい彼をじっと見上げてしまっていた。

 「ん?どうしたの?」

 「あ、いえ。何でもありません」

 「教えて?優茉」と背を屈めて耳元で囁かれ、その近さに顔が熱くなる。あれ...でも、なんかこの状況、既視感があるような...?

 「...えっと、ただ、少し、柊哉さんの香りがいつもと違うなぁって思っただけで...」

 「ああ、多分ヘアオイルかな。ふっ、優茉だよ?俺にもつけたの」

 「えっ?そ、うなんですね...。なんか、ごめんなさい...」

 「いや、この香りは好きだし気にしなくていいけど...やっぱり昨日の事は覚えてない?」

 「お店からどうやって帰ったのかも覚えていなくて...」

 これは嘘じゃない。でも本当はその先の事は少しずつ思い出してきているけど...、恥ずかしいので覚えていないことにしておきたかった。

 「そっか、昨日は俺が電話から戻ってすぐタクシーで帰ってきたんだよ。あと、伊織が優茉に謝っておいてって言っていたよ」

 「えっ?謝る...?」

 「そう、二杯目に飲んだダージリンクーラーは伊織がチョコレートリキュールも入れるように頼んでいたんだよ。
 だから通常のものよりも度数が上がっていて、それを優茉は一気に飲んだだろう?」

 「そ、そうだったんですね...。たしかに、甘くて美味しかったのでペースは速かったかも...」

 「やっぱり俺が居ないときはあんまり飲まないでね?心配だから」

 「はい、気をつけます...」

 車に乗り込み、まずはジュエリーショップへ指輪を受け取りに向かう。
 出来上がった指輪は、ピカピカに輝いていて眩しいほど...触るのを躊躇うくらい綺麗だった。内側の刻印も素敵で、結婚式でこれをはめることが今からとても楽しみ。

 結婚式、披露宴は別々で行う為それぞれの打ち合わせをし、細かいところまで決めて行く。
 何度か私一人で打ち合わせに来たけれど、なかなか一人では決断できない事も多かったので、今日はとても頼もしかった。
 
 私の方の衣装はほとんど決まっているので、今日は柊哉さんの衣装合わせをし実際に試着をしていく。
 普段のスーツ姿も白衣姿も素敵だけど、タキシードや和装もとっても似合っていて終始ドキドキしっぱなしだった。

 それと同時に、こんな素敵な人の横に立つのだから、私ももっと努力しないとと改めて気持ちが奮い立った。
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