エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 そして迎えた九月。明日から私と柊哉さんは、結婚式とハネムーンのため一週間ほど休暇を頂くことになっている。

 春から始めた挙式の準備も全て整い、私は少しでも綺麗になりたい一心でダイエットをしたり、お肌や髪の毛、爪先までお手入れを入念にしてきた。

 柊哉さんには内緒で私だけ食事内容をヘルシーな物に変えていた事がある日バレて、「ダイエットは必要ないから今すぐやめなさい」と怒られてしまったけれど...。
 とにかくやれるだけの事をして、人生で一番綺麗な姿で迎えたかった。


 そして夏頃からパートのクラークさんが一人増えたので、この一週間は彼女にお願いする事になっている。
 私は出来る限りギリギリまで作業をし、引き継ぎを済ませて無事に仕事を終えたけれど、彼の方はスケジュール調整がとにかく大変だった。

 もちろん周りの皆さんは協力的で、私たちが休暇を取るために色々と調整して頂いたけれど、病気は待ってはくれない。
 ギリギリまでオペのスケジュールを調整し、今日も帰りは遅くなるとメッセージが来ていたので私は先に帰宅した。

 明日から一週間家を空けるため、冷蔵庫にはほとんど食材はない。帰りにテイクアウトで二人分の食事を買ってきて、私は早速荷物の準備を始めた。

 あまり旅行に行く機会も無かった為小さいキャリーケースしか持っておらず、先日大きいサイズの物を彼と一緒選んだ。

 真新しいキャリーケースを広げて、必要な物をどんどん詰めていく。洋服やバッグ、靴などは一ヶ月ほど前からわくわくしながら決めていたのでそれらを入れ、あとは式に必要な物やお手入れグッズなども忘れずに詰める。

 明日からの事を考えながら荷物を準備するのはとても楽しく、彼が帰ってくるまで食事も忘れていた。

 連日遅くまで勤務していた柊哉さんも、今日は他の先生方の気遣いもあり少し早く帰ってこられたそう。

 「おかえりなさい!お疲れ様でした」

 「優茉もお疲れさま。帰ってからずっと荷物を用意していたの?」

 「あ、ご飯食べるの忘れていました。一緒に食べましょう」

 「ふっ、楽しみだな。でも時差もあるし、特に優茉は体調を崩さないようにちゃんとご飯も食べないと」

 すっかり冷めてしまっていたご飯を温め直して、久しぶりに一緒に食事をしながらガイドブックを開く。

 「行きたい所は決まった?」

 「はい、いくつか決めました!でも時間があればこことか、あとこれも食べてみたいです」

 私が貼った付箋がたくさん付いているガイドブックを見ながら、彼もいいねと賛成してくれた。

 「やっと優茉とゆっくりできるな。準備とかほとんど任せてしまってごめん」

 「いえ、このお休みのために柊哉さんがどれだけお仕事されていたのか知っていますから。ありがとうございます」

 食事を終えて、彼の分も荷物を詰め終えると二人でゆっくりと湯船に浸かった。
 今日も何時間も立ちっぱなしだった彼の脚や、筋肉が強張っていた腕や肩、指までマッサージをしてからあがる。

 「やばいな、俺も優茉に触りたくなるけど...今日は我慢して早く寝ないとな」

 「そ、そうですよ。お疲れなんですから、明日からの為に寝ましょう?」
 
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