エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
気がつけばうとうとと眠っていて、部屋のチャイム音で目が覚めた。横には彼の姿はなく、リビングの方で物音がしていたので、もう支度の時間になってしまったのかと慌てて起きリビングの扉を開く。
するとそこには、綺麗なお花で彩られたオーバルブーケを持った柊哉さんの姿が。
「これは...?」
たしかブーケは、プルメリアを基調とした真っ白なものだったはず...。でも彼の手の中にあるのは、ピンクや黄色など可愛いらしい色合いの花々でまとめられているもの。
「優茉、ブーケのデザインを勝手に変更してごめん。実はプランナーさん達と相談して、俺が選んだ花で特別に用意してもらったんだ」
「え?柊哉さんが...?」
「この花たちには、俺の想いを込めたから優茉に持っていて欲しい。...気に入ってもらえた?」
「はい、とっても素敵です!それに、柊哉さんが選んで下さったなんて...嬉しい」
そっと手渡されたブーケをよく見ると、真っ白と中央が黄色のプルメリアにピンクのバラ、そして白や淡いグリーンのトルコキキョウなど可愛らしいお花が綺麗に纏められている。
「可愛い...!柊哉さん、本当にありがとうございます。もしかして、お花に込めた想いって...」
そこまで言ったところで、ブーケごとそっと抱きしめられた。
「花言葉、優茉は全部わかる?」
「えっと、たしかピンクのバラは...愛?」
「そう。"可愛らしいさ"と"温かい心"の意味もある。それから、五本で"あなたに出会えて心から嬉しい"っていう意味も」
「本数にも、意味があったんですね...」
「この花は"優美"、これは"清らかな心"、それからハワイではプルメリアは愛の象徴とされていて、一途な想いや大切な人の幸せを願うという意味もあるんだ」
「素敵...どれも私にはもったいないくらいです」
「どれも優茉にぴったりだよ。俺の想いと共に、受け取ってくれる?」
「はい...私も、愛してます」
ぐっと背伸びをして、感謝の気持ちを込めて彼の唇に自分のをそっと重ねた。
「ありがとう。ふっ、もうすぐメイクさん達来ちゃうよ?」
そう言って、自分でも気づかないうちに溢れていた涙をそっと親指で拭ってからお返しのキスをくれる。
身体を離されたのと同時に部屋のチャイムが鳴り、慌てて涙と口元を拭って緩んでいた頬に力を入れた。
担当してくれたメイクさん達は、皆さんとても明るくて親切な方ばかりで、支度をしている間はとてもリラックスできた。
ヘアメイクが終わりドレスを着せてもらうと、ぐっと緊張感が増してきたけれど、いよいよだと思うと嬉しさの方が大きい。
「うん、完璧ね!とっても綺麗よ!さっそく旦那様にお披露目しましょう!」
その言葉と同時にドアが開いて、別の部屋で支度をしていた柊哉さんがゆっくりと近づいてくる。
鏡に映る自分はプロの手によってまるで別人のように変身させてもらったので、彼の目にどう映るのか少し不安だったけれど...
真っ白なタキシード姿の柊哉さんはまさに王子様で、不安は一瞬で飛んでいき思わず見惚れてしまった。
お互いに言葉もなくしばらく見つめ合ってしまい、メイクさん達の笑い声でハッと我にかえる。
「ごめん、あまりに綺麗で見惚れてしまった。優茉、すごく似合ってる。本当に綺麗だよ」
「ありがとう、ございます。柊哉さんこそ、とっても似合っていて、すごく、素敵です...」