エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
翌朝、いつもより早く家を出て二人で産科の外来へ向かった。
何年も働いているけれど、ここに来るのは初めて...。検査薬は陽性だったけれど、今になって本当に妊娠しているのかとても不安になってきた。
淡いピンク色で統一された柔らかい雰囲気の待合室に着くと、すぐに看護師さんが来て検尿や問診票の記入をしていく。
診察室に呼ばれるまで、ドキドキして速い鼓動に息苦しさを感じ深呼吸を繰り返していた。
「優茉、大丈夫?緊張してる?」
「大丈夫、です。でも、なんだかとても不安になってきて...」
「大丈夫だよ、俺も一緒にいるから。力抜いていたらエコーも痛みはないはずだし」
「...ずっと、検査の時も、手繋いでてくれますか?」
「もちろん。何も心配しなくて大丈夫だよ」
そう言って額にキスをしてくれたのと同時に、診察室へと呼ばれた。
緊張がピークに達し動けない私は、柊哉さんに引っ張られるようにして立ち上がり、手を引かれて診察室へと入った。
「お待たせしましたー。香月、久しぶりだな。奥さんも、披露宴以来かな?」
柔らかい笑顔で迎えてくれたのは、産科の南 陵真先生。何度かお見かけしたことはあるけれど、対面してお話しするのは多分初めて。緊張からぺこっと頭を下げることしか出来ず、柊哉さんに促されて患者さん用の椅子に腰掛けた。
「ありがとうな。朝から時間とってもらって」
「いーえ、でもあんまり時間はないからさっそく診てみようかな。優茉さん、内診台に移りましょうか」
「優茉、大丈夫だよ。お腹の中診てもらおうな?」
「ふふっ、緊張してるね。大丈夫ですよ、何度か深呼吸してたら終わりますからね」
そう言われて内診台がある隣の部屋へ移り支度が終わると、柊哉さんも入ってきて約束通りぎゅっと手を握って頭を撫でてくれた。
言われた通りに深呼吸を繰り返していると、横にあるモニターにエコーの映像が写り南先生の声が聞こえてくる。
「モニター見えるかな?チカチカ点滅しているところ。ちゃんと心拍確認できてるよ、今のところ問題なさそうだから安心して」
すごい...本当に赤ちゃんがいるんだ、私のお腹の中に...
「優茉、良かったね。赤ちゃん、ちゃんと心臓動いてるよ」
「はい、本当に、良かったです」
彼の優しい笑顔を見た途端、安心感からかぽろっと涙がこぼれ落ちた。それをそっと親指で拭ってくれて、ちゅっと温かい唇が触れた。
診察室に戻ると「お疲れ様でした。これさっきの写真ね」と先ほどみた小さな赤ちゃんが映った写真を手渡される。
「おめでとう、今は六週目の後半ってところかな。そろそろ悪阻もで始めると思うし、今の時期は特に無理しないでくださいね。
あと、喘息は妊娠の影響で悪化する事もあるからいつもと違ったらすぐに教えて。結城とも相談するけど、しっかり服薬続けて出産まで上手くコントロールしていきましょう」
「ありがとう南、出産まで優茉のことよろしく頼むよ」
「了解、任せておいて。香月も忙しいだろうけど、奥さんの事気をつけてやってよ。まぁ、過保護にし過ぎて愛想つかされない程度にね」