エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 その後、絶対に無理はしないよう再び念押しされてから仕事へと向かい、先に来ていた天宮さんに事の次第を小声で報告した。

 「やっぱり!優茉ちゃんおめでとう!それに、出産予定日ちょうど私と一ヶ月違いよ!」

 「ありがとうございます、天宮さんのおかげで気がつけたので本当に感謝しています」

 「香月先生も喜んでたでしょ?」

 「はい、喜んでくれました。でも、すこし悪阻の症状を言っただけで全身診察されてしまって...」

 「あははっ、香月先生ほんと心配なのね優茉ちゃんの事が。溺愛しすぎて超過保護になっちゃいそうね」

 「ふふっ、すでに過保護にされてる自覚はあります」

 そんな話をしながら晴れやかな気分でお仕事をしていたけれど、ふと気がついた。

 「あの、天宮さん。私たち同時期に出産となると、一気にクラーク辞めてしまうことになりますよね...?」

 「あっ...確かに、そうね...。早いところ後任見つけて引き継ぎしないといけないわね!
 安定期に入ってから報告するつもりだったけど、それじゃあ遅いし早いところ相談しないとダメね」

 「そうですね、院長にもお伝えしないと...」

 今日は忙しかったけれど、二人で協力し無事に終業時間を迎え、着替えを済ませて出るとロッカー室の前で柊哉さんが待っていてくれた。

 「優茉、お疲れ様。身体は大丈夫?ちゃんとお昼食べた?」

 「お疲れ様です、特に変わりはないので大丈夫ですよ。柊哉さん、もう帰れるんですか...?」

 「うん、これからはなるべく一緒に帰れるようにするから。
 天宮さんも無理しないで、体調良くない時は休んでね。人事にも言って早めに後任見つけておくから」

 「ありがとうございます、さすが香月先生ですね。まさに今日その事を優茉ちゃんと話していたので、安心しました」

 ふふっと含みのある笑みを浮かべながら、また明日ねーと手を振る天宮さんを見送ってから、私たちも駐車場へと向かった。

 「優茉、さっきの話だけど、人事に言う時に理由を話さなきゃいけないだろ?そしたら院長の耳にも入ると思うから、その前に父さんには伝えておいた方がいいと思うんだけど、どうかな?」

 「はい、私もそう考えていました。まだ六週目なので少し早いですけど、事情が事情なのでお伝えした方がいいと思います」

 「ありがとう。じゃあ、もう少ししたら二人で報告に行こうか」

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