エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
柊哉side

 泣きじゃくり呼吸が苦しそうな優茉を抱き上げて膝に乗せ、落ち着くまで背中を撫でていると、次第に呼吸は安定し寝息に変わった。

 水島先生から連絡をもらった時は、一瞬頭が真っ白になり、痛いほど激しい動悸に襲われた。
 その後の南からの連絡で安堵したが、それと同時に倒れるまで気づいてやれなかった自分に心底腹が立ち落胆した。

 我慢していたものが一気に崩れたように泣きじゃくった優茉を見て、胸が痛くてたまらなかった。

 俺の前では弱音も吐かず、きっと心配をかけないよう無理をしていたんだろう。
 どうしてもっと寄り添ってやれなかったのだろう...優茉の性格は、俺が一番分かっていたはずなのに...。
 眠ってしまった彼女を離すことができず、そのまましばらく抱きしめていた。


 「泣き疲れて寝ちゃった?」と気を利かせて部屋を出ていた南が戻ってきて、彼女の状態を改めて説明してもらう。

 採血のデータを見せてもらうと、正常とは言えない数値が目につく。貧血も悪化しているし、優茉の身体はボロボロだ。

 「こんな状態でよく仕事していたね、奥さん」

 「...俺のせいだな。もっと早く、少し強引にでも安静にさせるべきだった」

 「まぁ、かなり我慢強いタイプみたいだから、自分でもここまで酷いと気がついていなかったのかもね。彼女にも少し話したけど、俺ならこのまま入院をおすすめするね」

 「ああ、そうだな。体調が落ち着くまでは、このままの方がいい」

 ぐっすりと眠っていて起きる気配のない優茉をそっとベッドに寝かせ、今日はもう彼女を一人にはしたくなかったので、一旦病棟に戻り事情を説明し、検査や回診などは代わってもらった。

 急いで病室に戻るとまだすーすーと眠っていて、そばで仕事をしながら彼女が起きるのを待っていた。

 業務を終えた天宮さんが見舞いに来てくれたが優茉は起きず、それでも顔を見て「二人とも無事でよかった」と涙ぐむ彼女。
 おそらくこのまま仕事を辞めることになると伝えると「私もずっと心配だったので、その方がいいと思います」と返され、自分の不甲斐なさを痛感した。

 その一時間後、目を覚ました彼女はキョロキョロと周りを見渡し状況を把握しようとしている。

 「優茉、ここは産科の病棟だよ。南とも相談したんだけど、しばらくはここに入院しような」

 「え...入院?今日、ですか?」

 「うん、このまましばらくね。優茉の身体ボロボロだから、落ち着くまではここにいよう?」

 そう言うとまたぽろぽろと涙を流し始めるので、再び抱き上げて背中を撫でる。

 「優茉、ごめんな。もっと早くに気づいてあげられなくて。辛かったね」

 「うっ、私、みんなに迷惑かけて、柊哉さんも、忙しいのに、私は何もできなくて...」

 「優茉、それは違う。誰も迷惑だなんて思っていないよ。それに優茉は、毎日悪阻に耐えて赤ちゃんを守ってくれている。俺には絶対に出来ないすごい事をしてくれているんだよ。だから、俺にも出来る事は協力させて?微力だけど俺にも二人を守らせて?」

 「柊哉、さん...」

 「今日は俺もここに泊まるし、なるべく一緒に居られるようにするから。だから、身体が楽になるまで入院しような」

 「はい...」

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