エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 結局入院生活は二週間に及び、その間は悪阻が特にひどく、ほとんど動くことも出来ずベッドの上で過ごした。

 身体は休息を欲していたのかホルモンバランスのせいか、どれだけ寝てもずっと眠たい。でもそのおかげか、少しずつ身体は軽くなり怠さや吐き気も落ち着いてきた。

 少しずつ食べられる量も増えてきたので、南先生から退院の許可もおり、今朝家に帰ってきた。


 柊哉さんはこの二週間、ほとんど家には帰らず少しでも時間ができれば私の所に来てくれ、夜は隣に簡易ベッドを置き一緒に寝てくれていた。
 忙しいのに申し訳ないと思ったけれど「もう"大丈夫"は禁止だからね」と言われ、素直に甘えることにした。

 気持ちが悪い時や気分が落ち込んでいる時は、抱きしめてもらい彼の香りを吸い込むと少し落ち着く。
 それに気がついてからは、毎日何度も膝に乗せてもらいぎゅっと抱っこしてもらっている。

 お仕事はやはり辞めた方がいいと言われてしまったので、退院してからは体調が良い時に引き継ぎを何度かして、今は家でのんびりと過ごしている。



 そして、妊娠六ヶ月を迎えた頃から悪阻は落ち着く日も増え、だいぶ動けるようになってきた。
 かなり体力が落ちてしまったので、元気な時はお散歩をしたり、病院までお弁当を届けに行ったり少しずつ動くようにしている。

 今日も柊哉さんが出勤してからゆっくりお弁当を作り、お昼前に医局まで届けに向かう。

 ナースステーションに寄ると、ちょうど天宮さんが休憩に入るところだったようで、久しぶりにお話がしたくて一緒に食堂へと向かった。
 
 「優茉ちゃん、顔色も良さそうね!やっと悪阻も落ち着いてきた?」

 「はい、だいぶ楽になってきました。天宮さんお腹目立ってきましたね」

 私は服を着ているとまだお腹の膨らみはほとんどわからないけれど、彼女は一目で妊婦さんだと分かるほど大きくなっていて制服が窮屈そう。

 「そうなの!急に大きくなった感じがして、だいぶ重くなってきたわ。今のところ順調なんだけど、もうすぐ後期に入るし今月で辞めることにしたの。
 だから、調子が良い時は一緒にランチでもしましょうね!」

 「はい!私も天宮さんと会えなくなるのが寂しかったので、ぜひランチ誘ってください」

 「私も本当は優茉ちゃんが辞めちゃってずっと寂しかったのよー!産まれるまでの間、ゆっくりたくさんお喋りしましょうね!」

< 208 / 217 >

この作品をシェア

pagetop