エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 柊哉さんが会計を済ませてくれてからゆっくりと立ち上がったけれど、まだ痛みは強くとても一人で歩いて帰宅できる状態ではない。

 「優茉、一人で家にいるのも心配だし、俺が終わるまで仮眠室で横になってて?」

 そう言いながら私の手を自分の首に回し、抱き上げられる。

 「わっ、柊哉さん!ゆっくりですけど歩けますから!重たいし下ろしてください!」

 「卵膜剥離、かなり痛かったでしょ?ごめんね、こんな時にそばにいてあげられなくて。一人でよく頑張ったね」

 「い、いえ...あの、それより抱っこは...」

 「先に破水する可能性もあるし、何かあったらすぐ連絡してね」

 どうやら下ろしてくれる気は全くないようなので、医局の奥にある仮眠室までたくさんの人とすれ違い恥ずかったけれど、素直に彼につかまっておくことにした。

 ベッドに横になると、ほんの少し痛みはましになり気づけばうとうと眠ってしまっていた。
 柊哉さんは仕事中もちょこちょこ顔を出してくれとても心配そうにしていたけれど、痛みは徐々に引いていき陣痛のように定期的な痛みはこなかった。

 一緒に帰るため駐車場へと向かう時には、生理痛のような痛みはまだあるものの、普通に歩けるほどになっていた。

 「だいぶ痛みは引いたみたいだね。まだ違和感はある?」

 「はい、まだ少し痛みはありますけど引いてきました。...このまま陣痛は来ないのかな...?」

 「どうだろうね。もうあとは赤ちゃん次第なんじゃないかな?いつ陣痛が来てもいいように、帰ったら入院バッグも玄関に置いておこうか」

 のんびりとそんな話をしながら帰宅し、柊哉さんが作ってくれた夕飯を頂いてからお風呂にゆっくり入り、最後かもしれないと大きなお腹を何度も撫でた。

 「もういつでも大丈夫だよ。待っているから、安心して出てきてね」そう話しかけながら温まりお風呂から上がると、少し腰の痛みが強くなった気がしてソファに横になった。

 「優茉、大丈夫?痛くなってきた?」

 「少しだけ、腰の辺りがさっきよりも痛くなった気がして...」

 「ベッド行こう?なるべく身体休ませた方がいいから」

 そう言ってまた昼間と同じようにあっという間に抱き上げられる。

 「しゅ、柊哉さん?歩けますよ?」

 「俺がしたかっただけ。だって、二人を同時に抱っこできるのも、最後かもしれないだろう?」

 「そ、そうかもしれませんけど...」

 そのままそっとベッドに降ろしてもらい、抱き寄せてしばらく腰の辺りをさすってくれていた。

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