エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
「うん、わかればよろしい!というわけで、ちょっと診察してもいい?」
ニコっと初めの笑顔に戻った結城先生は、ひと通り診察を終えると布団を掛け直してくれる。
「よし、OK。おしまいです。
ここからは医者としての質問じゃないんだけど、香月のことは本当に知らないの?」
「はい、噂でしか...。ここには五年くらい勤めているんですけど、ずっと外来受付だったので先生方にお会いする機会はなくて...」
「へぇ、そうなんだ。珍しいね。けどあいつ心配してたし、君が目が覚めた事教えておいてもいい?」
「あ、はい。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんとお伝えください」
「ははっ、そんな硬いやつじゃないって。まぁこれから同じ職場だし、少しずつわかっていくと思うよ。じゃあ伝えておくから、ゆっくり休んでね」
そう言って結城先生が出て行ってから一人になると、久しぶりの入院という事実がずしんと胸にのしかかった。大人になってからは一度もなかったのに...。
もういい歳だけど、いくつになっても病院のベッドで眠るのは慣れない。
早くお家に帰りたい...。
そういえば着替えとかどうしよう。私の家の合鍵を持っているのは祖父母だけ。忙しい二人に頼むのも心配をかけるのも気が引けるけれど、他に頼める人はいない。明日の朝お願いするしかないか...。
そんな事を考えている間に眠っていたようで夜中に目が覚めたけれど、身体は休息を欲していたようでまたすぐに眠りにつき気がつけば朝を迎えていた。