エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 朝になってからおばあちゃんにメールをして、必要な物を持ってきてもらえるようにお願いをした。

 朝の回診に来たのは、昨日の結城先生ではなくまた別の先生。診察中に何気なくネームプレートを見ると"天宮 健吾"と書いてあり、思わず「あっ」と声を漏らす。

 「どうしました?」と優しく微笑まれ、「あ、いえ。あの、天宮さんの...」と言うと「はい。いつも妻がお世話になってます」と頭を下げられた。

 「とんでもありません!私の方こそいつもお世話になっております」

 「ははっ、妻がよくあなたの話をしているんですけど、想像通りの方でした」

 え?想像通り...?天宮さんはいったいどんな話をしていたんだろう?と急に恥ずかしくなる。

 「妻がとても心配していたんですけど、昨日は夜まで眠られていたみたいなので。仕事が始まる前に顔を出したいと言っていたんですけど、いいですか?」

 「はい、もちろんです」


 その後病室で待っていると、いつもの始業時間の十五分前にトントンとドアをノックする音が聞こえ、入ってきたのはやはり天宮さんだった。

 「優茉ちゃん!大丈夫?倒れたって聞いた時は驚いたけど、先週から少し体調悪そうだったものね。倒れる前に気づいてあげられなくてごめんね」

 「いえ!私の方こそ急に入院になってしまって...ご迷惑おかけして本当にすみません」

 「優茉ちゃんが謝る事ないわ。それに、旦那に聞いたけどけっこう前からだったのよね?しばらくは治療が必要って言っていたし、本当に無理しないでゆっくり戻ってきてね」

 しばらくは治療が必要...。私も初めて知ったけれど、昨日の結城先生の話からしたら当然か...。
 
 「それより優茉ちゃん!昨日介抱してくれたのって香月先生だったのね!」

 「そうみたいですね...。私とんでもないご迷惑をおかけしてしまって...。合わせる顔がありません」

 「そんなことないわよ!香月先生もすごく心配そうにしてたわ。それに、優茉ちゃんの事ちょっと気になってるみたいだったし!」

 ふふっと笑う天宮さんに苦笑いを返す。

 「決してそういう意味で気になっている訳ではないかと...」

 はぁ。何て言って謝ったらいいんだろう。早く仕事は復帰したいけれど、その事を考えると今から憂鬱。

 「まぁとにかく!仕事のことは本当に気にしないでね。あと、何かあったら私で良ければ何でも言ってね!」

 そう言って手を振りながら仕事に行ってしまった。急な入院で少し落ち込んでいた心に、天宮さんの優しさが沁み渡った。
 早く元気にならないと。また迷惑をかけないよう退院してからも、ちゃんと状態をコントロール出来るようになるまできちんと通院しようと心に誓った。

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