エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
柊哉side

 彼女の病室へ向かうと、中から話し声が聞こえる。まだ診察中のようなので、ドアの外で終わるのを待っていると、少しして結城が出てきた。

 「おう、来てたのか。診察は終わったから、後はごゆっくり」

 そう言ってうっすらとニヤニヤしながら、俺の肩をポンと叩いて行く。
 
 正直、彼女に会って何を話すかも決めていない。どんな反応をされるのかと思うと少し躊躇ったが、意を決してドアをノックした。

 中から返事があり、ゆっくりとドアを開ける。
 そこには、可愛らしい薄いピンクのパジャマを着て肩下まである髪の毛を下ろした彼女が、身体を起こしてこちらをみていた。
 二.三秒ほど間がありキョトンとしていたが、何かに気づいた様にハッと目を見開いた。

 「入ってもいい?」と一応入室の許否を問うと、驚いた様にフリーズしていた彼女が慌てて佇まいを正し「は、はい。どうぞ...」と恐る恐るといった感じで入室を許可してくれた。

 この反応は...、単に驚いているだけか?
 それとも怖がられている...?
 後者だと困るので、少し頬を緩めて柔らかい表情を意識する。

 「体調はどう?昨日よりだいぶ顔色は良くなったように見えるけど」

 「は、はい、お陰様で...。あ、あの、こ、香月先生、ですよね?」

 「ああ、まだ名乗っていなかったね。今日からここの脳神経外科に戻った香月柊哉です」

 「あ、クラークの宮野優茉と申します。この度は大変なご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!」

 「いや、顔をあげて?迷惑なんてかけられていないよ。医者だから助けるのは当然のことだし、治療したのはほとんど結城だから」

 掛け布団におでこが付くほど勢いよく頭を下げた彼女だが、俺の言葉にゆっくりと顔を上げると、先程とは違いほっと少し安心した様な顔をしていた。
 その顔を見て、俺はそんなに怯えるほど怖そうな奴に見えていたのか...?と表には出さず内心少しだけショックを受けていた。

 「でも、あの時先生が通りかかって下さって本当に助かりました。ありがとうございました」

 「あの時は意識レベルも低くて脱力していたから心配したけど。回復してきているみたいでよかった」

 少しずつ彼女の表情も和らいできたので、話を続けてみる。

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