エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 はぁ、ドキドキした...。

 香月先生が部屋を出てから数秒後、思わずため息が漏れた。
 回診が終わってすぐにまたドアがノックされ、てっきり結城先生が何かを忘れて戻られたのだと思った。

 でも、ドアが開いてそこに立っていたのは...

 長身の結城先生よりもさらに背が高そうな、紺のスクラブに白衣を羽織った男性。
 切れ長の目にスッと通った鼻筋、形の良い薄い唇がバランスよく配置された恐ろしく端正な顔。

 誰だろう...と思った次の瞬間には、思い当たる人物が頭に浮かび身体が硬直した。

 も、もしかして... いや、絶対そうだよね...?

 合わせる顔がないと思っていた張本人が突然現れて、頭の中はパニック状態。ど、どうしよう!まさか香月先生の方から病室に来られるとは...想像もしていなかった。

 とにかく誠心誠意謝るしかないと決め、一息で言い切り勢いよく頭を下げた。
 噂でしか知らない御曹司様がどんな人かも全くわからないし、部屋に入ってきた時の少し硬いクールな表情も相まって、恐怖心に似たようなものがあった。

 だけど...、話してみると勝手に想像していたような方とは全く雰囲気も違った。
 私を助けた事も医者として当たり前だと言い、ゆっくり治せばいいと私の身体だけでなく仕事のことも気遣ってくれた。それに、ふっと少し微笑んだ時の柔らかい表情...。

 ドキッとした...

 何故だかわからないけど、動悸が止まらない。

 私、緊張して変なこと言わなかったかな...?子どもの頃の入院とか、母親の事とか余計な話しちゃったかな?
 いや、そんな事より私パジャマ姿にすっぴんだった...。

 後になって色んなことが気になり始め、落ち着かない動悸と不思議な気持ちもプラスして、その日は深夜まで寝付くことができなかった。
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