エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
柊哉side
その数日後、俺が倒れたという噂が想像以上に広まっていて驚いた。他の科の友人や同期からも連絡が来る始末だ。
スマホが鳴り、今度は誰だ?とため息混じりに画面を確認すると院長からだった。まさか、院長まで噂が届いているのか...?
妙な寒気を感じながらも電話に出ると、いつもの業務連絡の口調で、昼休みに院長室に来いとだけ言われすぐに切れた。
なんだ...?今までこんな風に呼び出されたことなどない。漠然と嫌な予感を感じたが、無視する事もできないため、仕事がひと段落したところで院長室へと向かった。
ドアをノックして入ると、院長は応接セットのソファに座っており、反対側に座れと促される。
「何かありましたか?要件は?」
「何かありましたかじゃないだろう。お前倒れたらしいじゃないか。いい歳になってもまだ自己管理が出来ていないのか?」
はぁ、やはりその話か...。面倒なので早く終わらせて戻ろうと「すみませんでした。以後気をつけますので」とだけ言ってすぐに立ち上がろうとしたが、そうはさせてくれない。
「待て柊哉、話は終わっていない。お前もいい歳だし、倒れた事を考えても食事や生活の面でサポートしてくれる人がいた方がいいだろう。
先日、加賀美製薬の社長と会った時娘さんを紹介されたんだ。気立ての良さそうなお嬢さんだった。お前にどうかという話だ」
......はぁ? 俺に、どうか?
それは俺に見合いをしてそのご令嬢と結婚しろということか...?想像もしていなかった話に呆れ、どう返事をしたらいいかわからず黙っていた。
「お前ももう三十三だろう?私がその歳の頃には、とっくに結婚してお前が産まれていたぞ。仕事上結婚している事は信頼にも繋がるんだ、そろそろ身を固めたらどうだ」
「はぁ」
二度目のため息は口から漏れていた。
見合いをしてよく知りもしない相手と結婚だなんて考えてもいなかった。そもそも好きでもない相手と結婚するくらいなら、俺は一人でいたい。
立場上どこかのお嬢様とか、親がお世話になっているとかで言い寄ってくる女性は数え切れない。だが、そういう打算的な付き合いは好きじゃないし、時間の無駄だと思っていた。そんな事に時間を使うなら、勉強していた方がよっぽどましだと。
そもそも、俺は本気で誰かを愛した事など一度もないのかもしれない...。学生の頃はそれなりに女性との付き合いはあったが、彼女を第一に優先する事などなかったし、気持ちの相違から別れを切り出されても、追おうと思う事もなかった。
俺には恋愛は向いていないのかもしれないな...。
もしも立場上必要だと言われても、やはり好きでもない相手と結婚なんて...
その時、なぜかふと一人の女性の顔が頭に浮かんだ。
俺はやっぱり、彼女の事を...
どちらにせよ、この気持ちを確かめるまでは見合いなど絶対に出来ない。
「それとも、お前にはそういう相手がすでにいるのか?」
自分の中で結論が付いたので、まずは適当な理由でこの場を収めようと言葉を選ぶ。
「はい、結婚したいと思っている女性がいます。なので、その話はお受け出来ません」
「ほう、それはどんな人だ?すぐに連れて来なさい。見合いの予定は二ヶ月後だ。それまでにお前に見合う女性だと私が納得したら、この話はなかった事にしよう」
......今まで親らしい事などほとんどしてこなかった人が、結婚にはここまで口を出すのか。
俺は本気で好きになった女性がいれば、この人が納得しようが反対しようが関係なく結婚するつもりだ。
そもそもなぜ納得させなきゃいけないのかと疑問すら湧き、父親への積年の思いが俺を苛立たせた。
とにかく、見合いの話は一旦保留になったようなのですぐにこの部屋を出たい。
「わかりました」と適当に返事をして立ち上がろうとした時、ドアをノックする音が響いた。
その数日後、俺が倒れたという噂が想像以上に広まっていて驚いた。他の科の友人や同期からも連絡が来る始末だ。
スマホが鳴り、今度は誰だ?とため息混じりに画面を確認すると院長からだった。まさか、院長まで噂が届いているのか...?
妙な寒気を感じながらも電話に出ると、いつもの業務連絡の口調で、昼休みに院長室に来いとだけ言われすぐに切れた。
なんだ...?今までこんな風に呼び出されたことなどない。漠然と嫌な予感を感じたが、無視する事もできないため、仕事がひと段落したところで院長室へと向かった。
ドアをノックして入ると、院長は応接セットのソファに座っており、反対側に座れと促される。
「何かありましたか?要件は?」
「何かありましたかじゃないだろう。お前倒れたらしいじゃないか。いい歳になってもまだ自己管理が出来ていないのか?」
はぁ、やはりその話か...。面倒なので早く終わらせて戻ろうと「すみませんでした。以後気をつけますので」とだけ言ってすぐに立ち上がろうとしたが、そうはさせてくれない。
「待て柊哉、話は終わっていない。お前もいい歳だし、倒れた事を考えても食事や生活の面でサポートしてくれる人がいた方がいいだろう。
先日、加賀美製薬の社長と会った時娘さんを紹介されたんだ。気立ての良さそうなお嬢さんだった。お前にどうかという話だ」
......はぁ? 俺に、どうか?
それは俺に見合いをしてそのご令嬢と結婚しろということか...?想像もしていなかった話に呆れ、どう返事をしたらいいかわからず黙っていた。
「お前ももう三十三だろう?私がその歳の頃には、とっくに結婚してお前が産まれていたぞ。仕事上結婚している事は信頼にも繋がるんだ、そろそろ身を固めたらどうだ」
「はぁ」
二度目のため息は口から漏れていた。
見合いをしてよく知りもしない相手と結婚だなんて考えてもいなかった。そもそも好きでもない相手と結婚するくらいなら、俺は一人でいたい。
立場上どこかのお嬢様とか、親がお世話になっているとかで言い寄ってくる女性は数え切れない。だが、そういう打算的な付き合いは好きじゃないし、時間の無駄だと思っていた。そんな事に時間を使うなら、勉強していた方がよっぽどましだと。
そもそも、俺は本気で誰かを愛した事など一度もないのかもしれない...。学生の頃はそれなりに女性との付き合いはあったが、彼女を第一に優先する事などなかったし、気持ちの相違から別れを切り出されても、追おうと思う事もなかった。
俺には恋愛は向いていないのかもしれないな...。
もしも立場上必要だと言われても、やはり好きでもない相手と結婚なんて...
その時、なぜかふと一人の女性の顔が頭に浮かんだ。
俺はやっぱり、彼女の事を...
どちらにせよ、この気持ちを確かめるまでは見合いなど絶対に出来ない。
「それとも、お前にはそういう相手がすでにいるのか?」
自分の中で結論が付いたので、まずは適当な理由でこの場を収めようと言葉を選ぶ。
「はい、結婚したいと思っている女性がいます。なので、その話はお受け出来ません」
「ほう、それはどんな人だ?すぐに連れて来なさい。見合いの予定は二ヶ月後だ。それまでにお前に見合う女性だと私が納得したら、この話はなかった事にしよう」
......今まで親らしい事などほとんどしてこなかった人が、結婚にはここまで口を出すのか。
俺は本気で好きになった女性がいれば、この人が納得しようが反対しようが関係なく結婚するつもりだ。
そもそもなぜ納得させなきゃいけないのかと疑問すら湧き、父親への積年の思いが俺を苛立たせた。
とにかく、見合いの話は一旦保留になったようなのですぐにこの部屋を出たい。
「わかりました」と適当に返事をして立ち上がろうとした時、ドアをノックする音が響いた。