エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
柊哉side


 彼女が俺の目を見て、ゆっくりと頷いた。

 これはYESってことだよな?

 少し強引だったのは自覚している。彼女が迷っている様に見えたから。
 最後の一押しとばかりに放った言葉は、ほとんど選択肢を取り上げたのと同じだっただろう。それでも俺のことを拒絶せず、こんな唐突で身勝手な提案を受け入れてくれた事が嬉しかった。

 ...悟られないよう冷静を装っているが、こんなに必死になったのはいつ振りだろう。やはり俺の心は、ずっと彼女を求めていたのだろうか...?

 「それは承諾ってことでいい?」

 一応確認すると、彼女はほんのり頬を赤く染めて「はい」とはっきり答えてくれた。

 「ありがとう。これからよろしく」

 そう言って右手を出すと、少し驚き躊躇いながらも、そっと両手で俺の手を包む様に握手を返してくれた。
 その手をぎゅっと握って「よろしく、優茉」初めて彼女の名前を呼んだ。


 その後あまり休憩時間も残っていなかった為、急いで残りを食べ連絡先を交換してそれぞれの仕事へと戻った。

 まだ少し困惑しつつも、頬をピンク色に染め微笑んでくれた優茉が頭から離れない...。そっと握り返してくれた手の感触も、はっきりと残っている。
 じわじわと胸の奥から、何か温かいものが湧き上がってくるような感覚も。

 この感覚は...

 あまり経験した事はないが、一つだけこれに似た感覚をはっきりと覚えている。

 十一歳の俺に、彼女が四葉のクローバーをくれたあの時。

 あの時と、同じだ。

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