エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
柊哉side

 仕事中もふとした時に彼女の事を考えそうになったが、一旦頭の隅に追いやり作業に集中し、最近では珍しく十九時には仕事を終え三年振りの場所に来ている。

 幼馴染の二人と会う時にいつも来ていたバー。ようやく都合がつき、飲みに行く事が叶った。
 変わらない店構えに懐かしく思いながらドアを開けると、カウンターに翔が座っているのが見えた。

 「おう!柊哉!こっちこっち」

 馴染みのマスターにも久しぶりと挨拶をしながら、翔の隣に座った。

 「久しぶりだな。相変わらず忙しそうだけど、三年振りの日本はどうだ?」

 「ふっ、もう一ヶ月も経てば慣れるよ。家と病院の往復しかしてないけど。でもまぁ、安心感みたいなものはあるな。それより、翔はついに副社長か」

 「ああ、それなりに時間はかかったけどな。実力で成果上げて幹部のおっさん連中を黙らせてやったよ」

 「ははっ、さすがだな。翔は」
 
 俺の幼馴染の一人である堂上 翔(どうじょう かける)は、業界最大手の医療メーカーDメディックス社長の長男。
 昔から負けん気が強く、俺とも様々な事で競い合ってきた良きライバルで向上心に溢れたやつだ。

 普段アルコールは飲まないが、明日はオンコールもない休日なので久しぶりに乾杯することにした。ギムレットを頼んで、もう一人の親友を待たずに飲み始める。

 仕事の話やカナダでの話、昔話など話題は尽きない。少し遅れると連絡があってから、一時間ほどしてやっと三人が揃った。

 「ごめんね、遅くなって。最後の案件がちょっと長引いちゃって。おかえり!柊哉!」

 そう言って俺の隣に座ったのは、もう一人の幼馴染で弁護士をしている相馬 伊織(そうま いおり)。
 こっちは翔とは正反対で、いつも穏やかで平和主義。昔から、俺達がヒートアップした時は伊織が間に入って宥めてくれていた。

 性格は正反対だか、俺たちは幼稚舎からの親友で、大人になってからも度々会っては飲みながら色んな話をする仲だ。
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