エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
クロッカス <切望>

 親友二人のおかげで、はっきりと気づく事ができた。

 三人とも次の日も仕事があるため、あまり深い時間になる前に帰路につき、シャワーを浴びてベッドに寝転ぶと、すぐに心地良い眠気がやってきた。
 ここ最近モヤモヤしていた心の霧が、さっと晴れたような気分だ。

 スタートしておきながら、自分でもどこに向かって進んだらいいのかわからなかった。でも二人のおかげではっきりとゴールが見えた。

 父親が決めた見合いまで約二ヶ月。この二ヶ月で、なんとしても優茉の気持ちを手に入れたい...
 そう思ったところで睡魔に飲み込まれた。





優茉side

 今日は衝撃的な出来事があり過ぎて、頭の中がまだ整理できていない。
 香月先生を前に緊張して、でもとても嬉しい言葉もくれて、そのふわふわと宙に浮いたような感覚のまま流されてしまったような気もする...

 本当に一緒に暮らすの...?あの香月先生と?

 はい、と返事をしてしまった以上もう引き返せないかもしれないけれど、全く想像すら出来ない...。そもそも大した恋愛経験もなければ、同棲なんてした事ももちろんない。

 しかも、ふりとはいえ婚約者って...?

 なんとか冷静になり仕事はこなしたが、家に帰ってから今日の出来事をずっと考えていた。
 やっぱり私、流されてとんでもない約束をしてしまったんじゃ...?今更焦りが込み上げてきて、どうしたらいいのかと落ち着かない。  

 でも、不思議と嫌だというマイナスな気持ちはない。香月先生がどんな人かまだわからないけれど、少しお話しただけでこの人は優しい心を持った繊細な人なんだろなって、直感的に思った。

 なんとなく、だけど...

 それに、初めて優茉と名前を呼んでもらった時...なぜか胸の奥から湧き上がってくるものを感じた。心が温かくなるような、そんな得体の知れないものが...

 ベッドに入り目を閉じても、今日見た様々な表情の香月先生が瞼の裏に映る。

 はぁ、全然眠れる気がしない...

< 42 / 217 >

この作品をシェア

pagetop