エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
柊哉side

 仕事がそろそろ片付きそうだと思い優茉に連絡をしたが、その後三十分ほど経って車に乗ってもまだ先ほど送ったメッセージは既読になっていない。

 気にはなったがとにかく家に帰り、玄関をあけると真っ暗でリビングには電気がついていない。

 ...何かあったか?こんな時間に外出している?...もしかして、家に戻ってしまったのか?

 急に不安になり、急いでお風呂場やトイレを確認してから奥へ行くと優茉の部屋から灯りが漏れていた。

 よかった...部屋にいるみたいだ。

 ノックをしても返事がないのでそっとドアを開けて覗いてみると、優茉が机で本を枕に眠ってしまっていた。
 顔を覗くと片方の頬がぎゅっと押されて可愛い顔になっている。しばらく見ていたかったが、そっと肩を叩いて起こすと本の内容が見え、看護ケアの本だとわかった。
 こんな本まで買って、患者さんのケアの仕方まで勉強していたのか...。真面目すぎて少し心配になるな。


 食事の後、今日は私が片付けますと譲らないので、お願いして先にシャワーを浴びた。

 明日は長時間のオペがある為、軽く確認作業をしてから早めに就寝しようと思っていたが、今日は一緒にベッドに入っても大丈夫だろうか...?
 迷ったけれど、優茉がお風呂から戻る前に寝室へ行きベッドでタブレットを見る事にした。

 しばらくして、ゆっくりと静かに寝室のドアが開いて、そこからそっと優茉が顔を覗かせる。

 「ごめん、先にベッドに入ってた。優茉もおいで、湯冷めしないうちに寝よう」

 そう言いながら反対側の布団を捲ると、そろそろとベッドにあがって毛布に包まりちらっとこちらを見ている。

 ...可愛い。まるで小動物のように愛らしい仕草をする彼女に、ドクンッと心臓が跳ねるのを感じた。

 「あ、あの...おやすみなさい」

 「ああ、おやすみ」

 冷静を装いながら挨拶を返し、電気を消し真っ暗にする。
 しばらく心臓がドッドッと早いリズムで打ちつけていて、優茉に聞こえていないかと不安になる程だった。

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