エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
アイマスクと一緒にもう一つお気に入りのリラックスグッズを持ってきていたので、それも先生に試してみる。
「先生、次は手を見せてください」
「手? これでいい?」
また不思議そうに小首をかしげながらも、素直に両手を出してくれる。
「じゃあ右手から失礼しますね」
先生の手を取って掌を上に向けて、ペンのように細長く先が丸くなっているツボ押しグッズで、優しくマッサージしていく。
少しずつ力を入れてツボを押しながら、ここはどうかな?と先生の表情を確かめると時々痛そうに顔をしかめている。
「っ、そこ、すごい痛い」
「ここは目と腸のツボです。やはり目がお疲れですね。こっちはどうですか?」
あちこち確認しながらツボを押して、最後に掌全体を揉みほぐすようにしてマッサージはおしまい。
先生は自分の両手を見ながらグーパーして「すごい、スッキリした...」と少し驚いてからにこっと笑ってくれた。
「よかったです。きっと緊張状態が続いて、筋肉が強張っていたのかもしれませんね」
「そうなのかな。あまり気にした事はなかったけど、指が動かしやすくなった気がする」
「先生の手はとっても大切な手ですから。たくさんの患者さんを救ってきた、神の手です」
「ははっ、ありがとう。 じゃあ、優茉も手を出して?」
私も? お返ししてくれるのかな?
意図はわからなかったけれど、軽い気持ちで右手を出すと、その手を先生がぎゅっと握ってぐっと引き寄せられた。
思わず反射的に目を閉じたけど、毎朝感じる香りと先生の腕に包まれている事に気がついて慌てる。
「あ、あのっ? ...先生?」
「知ってる?ハグってストレス緩和に効果があるんだよ。免疫機能の向上や睡眠を促す作用もある。だからもう少しだけ」
ぎゅっと腕に力が入って強く抱きしめられ、すっぽりと先生の腕の中に収まってしまった。
こ、これは......
先生なりのお返し...?
でも、今の私には睡眠を促すどころか、心臓が痛いほど強く打ちつけていて全く落ち着かない。体感では五分くらいあったけれど、きっと実際は十数秒。
先生の腕が解かれて、顔を覗き込まれる。
「どう?効果ありそう?」
「あ、えっと... どう、でしょう?」
きっと今の私は、耳まで真っ赤になっている自信がある。それが恥ずかしくて俯くと、先生の両手が伸びてきて頬に添えられ、上を向かされた。
「ふっ。優茉、顔が赤い。耳も」
ふいにスッと耳が先生の指で優しく撫でられて、身体がビクッとしてしまう。
恥ずかしくて、先生の両手を外しまた下を向くと、今度は右手を握られて少し引っ張られ、それにつられて立ち上がる。
「優茉、寝よう?」
そのまま手を引かれて寝室まで行き、ドアを開けた所で離された。
いつもの位置にそれぞれベッドに入ると「明日が楽しみだ。おやすみ」そう言って、私の前髪にちゅっと一度キスを落としてから灯りを消した。