エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
あっという間に定食を食べ終えた風見さんに「向いてないってどうして?何か嫌な経験でもしたの?」とつっこまれてしまったけれど...
「ほらほら、正面突破しようとしても無理よ。ちゃんと攻め方考えなさい」
話の内容はよく分からなかったけれど、天宮さんのおかげで詳しい話をせずに済んで助かった。
「そうですね...。想像よりも遥かに難しそうだ...」
風見さんもよくわからない事を言いながら、腕を組んで考え込んでしまった。
「ふふっ、思ったよりも難攻不落そうね」
「壁は高そうです...。でもまぁ、高ければ高いほど燃えるたちなんで!」
そんな二人の会話を聞きながら、食べ終えたお弁当箱をバッグにしまう。
風見さんはふと腕時計に目を落とし「やばっ、もう戻らないと! お二人ともお先です!」と慌ただしくトレーを持って行ってしまい、私達も片付けて戻ることにした。
戻る途中でトイレに寄って、少しメイクを直してから常備している水筒のお水で薬を飲む。
アレルギーの薬と、子どもの頃からの持病である喘息の薬。
特に花粉が多く飛散する今の時期は、喘息の方も調子が悪くなりやすい。時々だけど発作を起こすこともあるため、それを止める薬も必ずこのバックに入れて常に持ち歩くようにしている。
午後は入院予定の患者さんのお迎えや手続き、カルテの作成や整理などがメイン。
その合間に看護師さんや先生方の補助、患者さんへの検査に関する説明、翌日の業務確認や準備...
多岐にわたる作業をしていると、あっという間に大きな窓から夕日が差しこみ、フロアがオレンジ色に染まる。
「宮野さん、ここに書いたもの倉庫室から取ってきてくれる?」
こうした備品を取りに行くおつかいも、大事なお手伝いの一つ。
「わかりました。すぐに取ってきます」
「ごめんね、助かる!」
そう言いながらバタバタとまた病室の方へと走る看護師の花村さんを見送って、頼まれたものを倉庫室まで取りに向かう。
それにしても、看護師さん達は本当にいつも忙しそう。他の科よりも人数が少し多いにも関わらず、常にフル稼働といった感じだ。