エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 私は昼間もたくさん寝たからまだあまり眠くはないけれど、柊哉さんは本を読みながらあくびをしている。

 「もう電気消しますか?」

 「そうだな。優茉もまだ微熱があったし、身体を休めないとな」

 本をベッドボードに置き電気を消すと、手を引かれて柊哉さんの腕の中に収まる。

 「優茉、二回」

 「......え?」

 何のことかわからず、柊哉さんの顔を見上げる。

 「今日、二回先生って言った」

 片方の口角を上げてニヤッと少し意地悪な笑顔でこちらをみている。

 「あっ...。い、言いました?二回も...?」

 「うん、ちゃんと数えていたから。二回してくれるんだよな?キス」

 えっ......そ、そういう換算なの?

 「で、でも、私熱があったので、柊哉さんに移してしまったら大変ですし...。きょ、今日はやめておいた方がいいんじゃ...?」

 「大丈夫。おそらく優茉の熱は過労による一過性のものだから。まぁ、どこにしてもいいけど?」

 うっ...これは逃げられそうにない...

 じっとこちらを見ているので、覚悟を決める事にした。

 「じゃあ、目、閉じてて下さい...」

 少しだけ身体を起こして、柊哉さんの額と頬にちゅっちゅっと二回キスをした。
 恥ずかしくて、とても自分から唇にはできない...

 薄暗いけど、真っ赤になっているであろう顔を見られたくなくて、すぐに胸に顔を埋めた。

 「ふっ、ありがとう。じゃあ、お返し」

 そう言って私の顎に指を添えてくっと顔を上げられて、ちゅっちゅっと唇に二回キスされた。




 翌日には、熱も下り身体も軽くなっていたので、やはり柊哉さんの言った通り一過性のものだったよう。

 柊哉さんは午前中だけ病院に行き、午後からは二人でショッピングモールへお買い物に出掛けた。

 季節は十二月に入り、そろそろ本格的に冬の寒さがやってくるころ。
 その前に暖かいパジャマを新しく買っておきたかった。去年まで使っていた物は、もこもこ素材だったはずなのに、数年使い続けたせいですっかりふわふわ感がなくなってしまっているから...

 最近ではベッドに入ると彼はいつも私を抱きしめながら眠るので、少しでも触り心地のいいパジャマにしたいなぁなんて思ってしまった。

 二人でお店を見て回ってどれにしようか迷っていたけれど、最初に入ったお店の物が一番気に入ったので戻ってきた。

 「やっぱり一番手触りがいいね。優茉に似合いそうだし、これがいいと思うよ」

 ゴワゴワしないなめらかな手触りのもこもこ素材で、柊哉さんが勧めてくれたのは白地に薄いピンクのドット柄。
 私はそれを買う事に決め、せっかくならと柊哉さんも同じ素材でメンズ用の紺色のパジャマを購入した。

 久しぶりに二人でゆっくりとお買い物ができて楽しかった。もうすっかり元気だけど、昨日熱があったので遅くならないうちにと、夕食はテイクアウトして帰ってきた。
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