エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 着いたのは、前に一度だけ入った事がある医局の奥にある小さな会議室。

 「突然ごめん、ちょっと話があったんだ」

 「どうかされたんですか?」

 「今朝院長から電話があって、明日帰国するらしく夕方には着くから、二人で院長室に来るように言われたんだ」

 「えっ?あ、明日、ですか...?」

 「そう。急で悪いけど、明日一緒に来てくれる?俺は当直でそのまま病院にいるから、明日優茉の仕事が終わったら連絡して欲しい」

 「わ、わかりました」

 「もし、優茉に嫌な思いをさせるような事になったら申し訳ない。でも前にも言った通り、何を言われても俺は優茉を手放すつもりはないから。それだけは覚えておいて」

 一度ぎゅうっと強くハグをして、腕が解かれると背を屈めて顔を覗き込まれじっと見つめられる。

 「優茉、愛してる」

 いつもより少し低い声で、そう言い終わると同時に唇を塞がれた。


 柊哉さんは病棟に戻り、私は一人で帰路につく。
 一人なってからはずっと明日の事を考えてしまい、気持ちが落ち着かなかった。

 誰かと話がしたくて夕食のあと麻美に電話をかけ、彼女とはあれ以来話をしていなかったのでこれまでの事を話すと、とても喜んでくれた。

 「大変だったね、優茉。でも幸せそうで本当に嬉しい。それに、柊哉さんがそう言ってくれているなら、優茉は信じてついて行ったらいいんじゃない?きっと彼なら、ちゃんとこの先の事も考えてくれていると思うし」

 「うん...。もちろん信じているけど、結婚となると私たちだけの問題じゃなくなるし、柊哉さんと院長の関係も気になるの...」

 「確かに結婚となれば家族の事も考えなきゃいけないかもしれないけど...。
 でも、私は二人の気持ちが一番大事だと思うけどな。もしも反対されても、すぐに諦める必要はないじゃない?二人の気持ちが揺らがなければ、次にどうするかを考えていけばいいと思うよ?」

 「うん...ありがとう麻美。話が出来て少し気持ちが落ち着いた」

 「優茉?もちろん私に話すのはいいけど、そういう不安な気持ちもちゃんと柊哉さんに話すべきだと思うよ?忙しいかもしれないけど、きっと彼なら受け止めてくれるから」

 「...そうだね。今度からはちゃんと相談してみる」

 「うん、それがいいと思う。優茉は無理して好かれようとなんてしなくて大丈夫だよ!」

 「ありがとう、とりあえず明日ちゃんと行ってくるね」

 「うん。またいつでも電話して!話聞かせてね」

 麻美と話をして少し気持ちの整理もできた。きっと何を言われても私の気持ちは変わらないから、彼を信じて覚悟を決めよう。
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