元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
 それから私は本堂の中に戻り座り込んだ。
 考えないといけないことがあったはずなのに何も浮かばない。
 ただひたすらボーッと如来様を見つめ続けた。

 どれくらい経ったのだろう。ふと、祖母とその幼馴染みの写真が頭に浮かんだ。

 そう言えば、祖母は花まつりの日に幼馴染みと会ったと言っていたのに、その方は葬儀に来られなかったな。
 でも誰からも連絡がなかったら知るよしもないか。
 私から伝えるべきかもしれない。

 すっかり根が生えてしまっていた私は重い腰を上げ、ひなの待つブランコに向かった。

 ブランコには誰も乗っていなかった。
 一通り遊び終わって飽きたのかもしれない。

 すぐ傍にある小さな砂場に、ひなと男の子の背中が見えた。

 同じ年だと聞いていたけれど、ひなよりずいぶん体格のいい子だった。お父さん似かな。

「あ、終わりましたか?」
「はい。ゆっくりお参りさせていただいてありがとうございました」
「いえいえ。ここは融通尊の光明によって福徳を授かり、全ての煩悩や苦しみから除かれて身も心も安らかになれるところです。あなたには今その安らぎが必要なようですね」
「……!」

 さすが、ここの副住職さんなだけある。
 私が悩んでいることを見ぬいちゃったのかな……。

 おそらく同世代なんだろうけれど、私よりずっと落ち着いて見える。
 お坊さんって皆こんな感じなのかしら。
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