元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
 伯父さまよりずっと背が高いのに、頭をポンポンと撫でられている鷹也は小さな子供のようだった。
 
「先代は全ての力が強かった。静子さんが幼馴染と楽しく話したと言っていたなら、本当に父が降りてきたのだろう。静子さんの最期の願いを叶えるために」
「最期の願い……」
「ずっと、杏子ちゃんの幸せを祈念されていたんだよ。幸せになって欲しかったんだろう」

 おばあちゃん……。
 
「だが一つ勘違いしないで欲しいのは、静子さんの願いだけじゃダメなんだ」
「え?」
「願いっていうのはね、誰かのことを思う気持ちももちろん大切だ。でも一番大切なのは本人の気持ちなんだよ」
「本人の……?」
「そうだ。わかりやすく言えば、病気の人がいたとしよう。なかなか治らない病気のね。医者や周りが『きっと治るよ』『神様仏様にも祈るから頑張れ』と言っても本人に治す気がなければ治らない。前向きに治療を受けて、生きるための努力をしないと回復には向かわない。余命宣告されていたとしても、努力しなければ宣告された期間よりも短くなるかもしれないし、逆に努力して『生きよう!』『生きたい!』と思えば、宣告されてた余命が驚く程に延びることもある」
「それはよく分かります! 毎日患者さんを診ているけど、本人の気の持ちようで驚く程回復力は違いますから」
「うん。きっとドクターは現場で目の当たりにしているだろうね」

 なるほど。分かりやすい説明だわ。
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