元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
『光蔵さんは初恋の人だった。でもあちらには許嫁がいて、最初から一緒になれないことはわかっていたんだよ』
『お互い好きだったの……?』
『……そんなときもあったね』

 祖母はちょっと懐かしいような、困っているような微笑みを浮かべた。
 叔母が言っていた話は本当だったんだ。

『今とは違って、生まれたときから許嫁がいたり、見合いで結婚するのが当たり前の時代だったんだ。誰もが家長の決めたことに逆らわず、当たり前のように受け入れていたんだよ』
『……』

 おばあちゃんの青春時代。
 好きな人を諦めて……か。

 今の私にはその気持ちがリアルにわかるだけに、昔の人は強かったんだなぁと思う。

『でも幸いなことに、一枝ちゃんはいい人だった。それに、じいさんもね』
『おじいちゃんとはお見合いだったのよね?』
『ああ。じいさんとは十歳離れていて、見合いの席に現れたとき、大人の男の人だなぁと思ったね。そりゃあ格好良くてね』
『ええ?』
『すでに和久井の棟梁を継いでいて、ちょっと無口だが流し目が色っぽいいけめんだったんだ』
『プッ……イケメンね』
『じいさんに似たのが大輝だ』
『ああ、たしかに』

 大輝は従姉の私でもたまにドキッとするくらい、目つきが色っぽい。

『格好良かったのさ。ばあちゃんは一目惚れしたんだよ』

 そうだったんだ!
 初恋は鷹也のお祖父さんだったけど、うちのおじいちゃんのこともちゃんと好きになって結婚したのね。
< 215 / 228 >

この作品をシェア

pagetop