元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
『久しぶりに会った光蔵さんは、同じように孫もいるいいじいさんになっていたよ。相変わらずすらっと背が高くてね。杏子を一目見て、慌てて駆けつけてくれた。頭を撫でて、魔法の飴だよってどんぐり飴をもらっていたね』
『それ……覚えてる……』

 今でも浮かぶ鷹也のお祖父さまの記憶と、祖母が言ったとおりの情景がピッタリ重なる。

『何度か寺にお邪魔して、やっと杏子が平安を取り戻したんだ。じいさんとホッとしたもんだ』
『……!』
『だから杏子はどんぐり飴が好きなんだろうね』

 そう言って祖母はスリーティアスタンドの下段を見ながら懐かしそうに微笑む。

 その後祖父が亡くなってからは、やはり遠慮があったのか、藤嗣寺へお参りすることは控えたそうだ。

 孫のことは緊急事態。
 一生会わないと決めたのだから、そこはけじめをつけるつもりでいたと。
 
 祖母が再び藤嗣寺を訪れたのは、光蔵さんの葬儀の時だった。

 一生会わないという誓いはちゃんと守った。
 もういいだろう。お別れの挨拶くらいは行かせてもらおうと、参列したお通夜で、祖母は初めて一枝さんと出会う。

 一枝さんは、光蔵さんから祖母の話を聞いていたらしい。

 これがもっと若いときなら、違う気持ちだったかもしれないが、お互い主人に先立たれた身。

 少し話しただけでわかり合える何かがあったそうだ。
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