元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
遺品整理
「写真立て?」
 
 さっきまで鷹也の姿をしてトイレに立っていたはずなのに、突然また自宅に戻って何故かひなの写真立てを持っていた。

「やっぱり夢? 私が鷹也になるなんて、あり得ないわよね……」

 愛しい我が子の写真を眺める。
 どの瞬間を切り取っても可愛くて、愛おしい。
 我が子がこんなにも可愛いものだと、ひなを産むまで思いもしなかった。

 ひなを見ていると、心の中で「かわいい、かわいい、かわいい……」と連呼している私がいる。

 さすがに表だっては言わないけれど、心の中はいつでもひなへの愛で溢れているのだ。

 ひなは幸いなことに、私によく似ていた。
 だから何度か鷹也に会ったことのある祖母も、ひなの父親が鷹也だとは気づかなかった。

 鷹也とはあれから一度も会っていない。

 商社に勤めていた鷹也は、あの一夜の翌日ロサンゼルスへ旅立ったはずだ。

 一夜の過ちがあったからと言って、鷹也に大切な人がいるのは変わらない。
 金輪際連絡を取らないつもりで、鷹也の連絡先はずっとブロックしたままだった。

 きっともう会うことはない。
 あれが最後。本当に過去にしないと……そう思っていた矢先、妊娠が発覚した。
 
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