元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
「失礼します」
「おー! 鷹也、来たか。お帰り」
「……ただいま帰りました」
 
 出社初日の正午。俺はフォースフォレストカンパニーの入っているビル、森勢商事ビルの最上階にいた。
 森勢商事の代表取締役社長、つまり父親に会うためだ。

「林田くん、弁当用意して」
「かしこまりました」
「鷹也、弁当を頼んでおいた。お昼時に外へ出たら何かと人の目につくだろう。ここの方が話しやすい」

 確かに森勢商事の社長がふらふら出歩いてランチの列に並んでいたら目立つだろう。

「松花堂弁当を用意しております。お飲み物は……」
「冷たいお茶でお願いします」
「林田くん、私は熱いお茶にしてくれ」
「承知しました」

 秘書の林田さんは四十代の男性で、もうかれこれ二十年は父に仕えている。

 穏やかで気遣いのできる人で、学生時代は俺も気安く喋っていたが、今の俺は関連会社の平社員だ。低姿勢を崩すつもりはない。

 お茶を置いた後は久しぶりの親子水入らずに気を利かせて、さっさと社長室を出て行ってしまった。
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