元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
 それから俺たちは会わなかった間のことを沢山話した。
 俺は仕事のことを。杏子は主に年の離れた腹違いの弟の事を話していた。

 俺は杏子が仕事のことについてはあまり話そうとしないことに気づいていた。

 しかし1年前に別れた時、杏子の仕事の話をしたことがきっかけだったので、その話題に触れることは躊躇われた。

 後になって、なぜあの時ちゃんと仕事や杏子自身の近況を聞き出しておかなかったのだろうと、悔やむことになったが、その時はその場をただ和やかに過ごしたくて何も言えなかったのだ。

 その日は結局二次会には行かず二人でバーへ飲みに行き、さらに飲み足りないからと俺のホテルの部屋で飲むことになった。

 だが、コンビニで買ったワインを飲むことはなかった。
 ホテルの部屋に入り、杏子と目が合った瞬間、俺の理性は飛んでしまった。

 杏子が欲しかった。
 手で触れて、キスをして、抱きしめて、杏子の中に入りたかった。

 元々俺たちは淡泊な付き合いだったと思う。
 もちろん7年の付き合いの間に体の関係はあったし、借りていたマンションでは蜜月を過ごしていたわけだが、どちらかというとただ傍にいられるだけで満足していたのだ。

 でもその日は違った。飢えていたのだ、杏子に。
 杏子に触れながら、俺は自分が飢餓状態だったことに気づいた。

 この飢えは杏子でしか満たせないのに、1年もの間、どうして我慢できたのだろう。
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