元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
「お兄ちゃん、おかえりー。お母さん私も入れて」
「はいはい、今日は飲めるの?」
「うん。オンコールじゃないから。お兄ちゃんも飲む?」

 そう言って麦焼酎『兼八』をドンッとテーブルに置いた。

「『兼八』か……。焼酎は久しぶりだな」
「水割りでいい?」
「あ、お母さんも――」
「父さんのも作ってくれ」

 父親も帰ってきて全員飲むようだ。

 森勢の家は酒豪だ。そして仲が良い。

 日本でも有数の医療専門商社の社長であるにもかかわらず、父は家族思いの愛妻家で家庭を第一に考えている。

 それはロスにいる伯父も同じで、アメリカに滞在中は伯父とその家族が俺のことを息子のように受け入れてくれた。

「ちょっとお父さん? 帰国するなり鷹也にお見合いをさせたんですって?」
「え、あ、いや……」
「ええーっ! 帰国した日に? 何やってんのよお父さん。さすがにお兄ちゃんが可哀想だわ」

 そうだろう、そうだろうと、俺は無言で頷く。

「鷹也もやっとあの女から解放されたし、そろそろ結婚を考える年だろうと思ってな」
「まあ、鷹也も苦労したからねぇ……」
 
 ハァ……。あの女のことはもう考えたくもない。
 どれだけ迷惑を被ったことか。
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