元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
「私、鷹也の許嫁なんです」
「……」
「あなたのことは鷹也から聞いています。学生時代のガールフレンドだって」

 会社帰りに待ち伏せされ、なんだかわからないままタクシーに押し込まれた。

 同世代のきれいな女の子だったから抵抗もしなかったけれど、あれは普通なら誘拐事件というレベルだ。

 着いた先はラグジュアリーな五ツ星ホテル、ヘブンリーゲートブリッジホテルだった。

 一階のロビーラウンジに引っ張っていかれ、開口一番告げられたのがさっきの台詞だった。
 
「でも私たちももう社会人。身分にあった社交活動も始めないといけないの」
「身分?」

 なんなの? 身分って。
 皇族でもあるまいし。

「あなた……知らないの?」
「……知らないって何が?」
「ハッ、呆れた。まさか森勢の家のこと、聞かされてないの?」
「……」

 森勢の家……。鷹也の実家が一体何なんだろう。

「森勢商事ってご存じ?」
「森勢商事……」

 さすがに知っている。というか、日本で知らない人はいないんじゃない? というくらい有名な商社だ。
 主に医療品や医療機器を取り扱っていて、専門商社の中では国内トップの企業だ。
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