元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
 案の定「杏子に決まって……」と言いだしたので、思いっきり手で口を塞いでやった。

「ここカフェだよ! 何言い出すの……まったく」
「……モゴ…………何でもいいって言ったのは杏子だろう?」
「……食事の話よ!」
「杏子、赤くなってるぞ」
「うるさい」

 あれだけ悩んだのに、会ってみたらいつも通りだ。
 他の人の前では絶対に見せない、私だけに見せるちょっと意地悪な鷹也の顔。

 こうやってからかわれてキュンとしてしまうのだから、私ってチョロいのかも……。

 それに、ひと月ぶりに会ってやっぱり嬉しいと思っている私がいる。
 会いたかったのだ、鷹也に。

「……冗談じゃなくてさ」
「え?」
「会いたかった」
「……!」
「食事、おごってくれるのはまた今度でいいよ。ここ、出よう……?」

 ドキンとした。
 鷹也の顔が、情欲に染まっていたから。
 これからどこに行きたいのか想像がついたから。

 それから私たちはカフェを出て、無言で歩いて行った。
 カフェから一番近いシティホテルへ。
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