元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
 シャワーもそこそこに私たちは抱き合った。

 この一ヶ月、不安で不安で、眠れぬ夜を過ごしたことを鷹也は知らない。

 でもひとたび抱き合えば、体だけじゃなく心も満たされた。

 やっぱり私はどうしようもなく鷹也を愛しているし、愛されていると感じる。

「杏子が不足してた」
「ん……私も」
「……話があったんだ」
「……何?」

 今はすごく満たされていて、そんなときにイヤな話だったらどうしよう……と身構えた。

「一人暮らしをしようと思う」
「一人暮らし? 実家を出るの?」
「ああ。今まではこうやって外で会うしかなかっただろう? でも就職してお互いなかなか休日が合わないし。俺がマンションを借りれば、夜ちょっとでも会える日が増えるんじゃないかと思って」
「それは嬉しいけど……」

 でも私は祖母と二人暮らしなのだ。
 祖母を一人にして鷹也と住むことはできない。

「杏子がお祖母さんをおいて一緒に住めないのはわかってるよ。だから住むところは杏子の近くにするよ。それならお互い仕事が終わってからでも会えるだろう?」
「鷹也……」
「実はもう探し始めているんだ」
「……うん。すっごく楽しみ」
 
 こんなに私との時間を大切に考えてくれているのに、私はどうして鷹也を疑ったのだろう。
 鷹也の気持ちが嬉しかった。
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