愛の充電器がほしい
第15話
美羽が風邪を引いてから
颯太は、そのまま美羽のアパートに
半同棲の形で住み始めた。
温かいご飯に
温かいふわふわのソファ
温かいふわふわのボアシーツに
温かく受け入れてくれる彼女の元に
帰るのが心地良くなってきた。
いつもの仕事も精が出る。
カフェインが強めのエネルギードリンクを
飲まなくてもシャキッと朝は起きられるし、
仕事もプライベートも充実し始めて来た。
本当の肩書をのぞいては…。
「颯太さん、今日、何時に仕事終わる?」
「えっと…、定時に帰れるかな。
たぶん。なんで?」
塩焼きした鮭にわかめの味噌汁の朝ごはんに
ありついていた颯太は、箸がとまらない。
「たまには、外でご飯食べたいから。
毎日作るの大変だし…。
あ、料理は作る楽しみではあるんだけど、
たまにはお休みしたいんだ。」
一緒にご飯を食べ始めて、1週間は経っていた。
美羽にとっても同棲のような関係は初めてだったが、
こんなに律儀に家に帰ってきてくれて、
しっかりご飯食べてくれるなんて思ってもなかった。
比べてしまうと、
拓海は用が済むとすぐに帰るタイプだった。
1人の時間が好きななのはわかるが、
こんなにべったり一緒にいる時間が長いのも
むずかゆい気もしないでもない。
うれしいことなんだろうだが…。
朝ごはんをご飯粒残さずに食べ終わって、
両手を合わせて、ごちそうさまを言うと、
颯太のスマホが鳴った。
画面には大家さんの名前が表示される。
「あれ、こんな朝早くにどうしたんだろう。
ずっと帰ってないからなぁ。」
「ん?
大家さん。
部屋に帰らないから何かあったのかな。」
「ちょっと、電話出てくる。」
颯太は、誰から電話かを教えては
丁寧にベランダの方へ行く。
日々、何の疑いもなく、
過ごしているが、
美羽も半ば心配であった。
前に行ったときの家族写真は、
しっかり見ていたためだ。
信じていいのか
大事にしてくれていることは真実だと
思いたい。
「もしもし?
上原です。
どうかしましたか?」
『上原さん?!
今、どちらにいたの?
あなたの家の前にたぶん、あなたのお子さん?
ずっと座って動かないのよ。
どうにかしてちょうだい。
声かけても何も話してくれないから。』
「え?!
嘘、そうなんですか。
すぐ、行きますから。
そう、伝えててください。」
状況を聞くと颯太は驚いた表情で、
ベランダから部屋の中に入ってきた。
「どうだった?
大丈夫?」
「えっと…。
なんか、部屋の水道管から
水が漏れてるって。
様子見てくるわ。
あと、なんだっけ、夕飯、
仕事終わりに行くって
話は美羽が決めていいよ。
ラインに行きたい場所送って。
ごめん。出るわ。」
慌ただしいそうにジャケットを羽織ると、
荷物を持って玄関の方へ行く。
「あ、うん。
わかった。気をつけて。」
手を振って別れを告ぐ。
急いで話して、慌ただしく動くため、
見送ることしかできなかった。
急に部屋が寂しくなった。
サンキャッチャーが天井を揺れている。
食べ終えた食器を洗い終えて、
頭痛薬を飲んだ。
満月が近いせいか、生理痛がひどかった。
何だか、ざわざわと胸騒ぎがした。
気のせいだろうと思い、
美羽は、バックを持っては、
いつも通りに会社に向かった。
バックの中身をもう一度確認してから
ハイヒールを履いた。
また今日も会社に行かなくてはならないかと
ふとため息をつく。
好きな仕事をしているはずなのに、
それでも、毎日同じ場所に行くのは
時々、億劫に感じることもある。
人間の性か。
満員電車に乗っては、
ぎゅーぎゅーの人混みの中の
街を歩いて行く。
それだけで息切れするときもある。
神経使ってるんだ。
人と人が話すことなく
過ごすということに。
楽しいことを考えないと
それだけで
真っ暗闇に吸い込まれてしまう。
スマホを開いては、小説や漫画を
スワイプして、ながめる。
それでも、心落ち着かないときは、
電車から見える景色を眺めるが、
人が多くてそれどころではない。
人間観察しては、中国人観光客は
何と話してるのか考察するしかないのか。
美羽は混沌とした毎日過ごす中で、
颯太がいて
幾分、心穏やかになってきた。
スマホの充電も2割を切ることが
少なくなった。
まだミステリアスで
謎が解けない部分が多いが、
それも含めて、楽しむ努力をしていた。
◇◇◇
出勤前に颯太は、
自分のアパートへと
駆け出した。
大家に言われて、
部屋の前に娘がいると
聞かされていた。
案の定、キャップ帽を深くかぶって、
キャリーバックを横に、
紬が、颯太のアパートの前に
しゃがんでずっと待っていた。
汗をかきつつ、
やっとの想いで着くとすぐに
どんっと颯太の胸に飛び込んできた。
「パパ!!!」
「紬、なんで
ここに1人でいるの?!」
颯太は、大きな荷物を1人で運んで
ここに来るには相当な体力を要したのではと
紬を心配した。
まだ小学2年生。
九九を覚えたばかりの7歳。
こんな小さな体で、
埼玉から東京のここに
来るとは思えなかった。
紬の頭をなでては、部屋の中へと誘導した。
颯太は、そのまま美羽のアパートに
半同棲の形で住み始めた。
温かいご飯に
温かいふわふわのソファ
温かいふわふわのボアシーツに
温かく受け入れてくれる彼女の元に
帰るのが心地良くなってきた。
いつもの仕事も精が出る。
カフェインが強めのエネルギードリンクを
飲まなくてもシャキッと朝は起きられるし、
仕事もプライベートも充実し始めて来た。
本当の肩書をのぞいては…。
「颯太さん、今日、何時に仕事終わる?」
「えっと…、定時に帰れるかな。
たぶん。なんで?」
塩焼きした鮭にわかめの味噌汁の朝ごはんに
ありついていた颯太は、箸がとまらない。
「たまには、外でご飯食べたいから。
毎日作るの大変だし…。
あ、料理は作る楽しみではあるんだけど、
たまにはお休みしたいんだ。」
一緒にご飯を食べ始めて、1週間は経っていた。
美羽にとっても同棲のような関係は初めてだったが、
こんなに律儀に家に帰ってきてくれて、
しっかりご飯食べてくれるなんて思ってもなかった。
比べてしまうと、
拓海は用が済むとすぐに帰るタイプだった。
1人の時間が好きななのはわかるが、
こんなにべったり一緒にいる時間が長いのも
むずかゆい気もしないでもない。
うれしいことなんだろうだが…。
朝ごはんをご飯粒残さずに食べ終わって、
両手を合わせて、ごちそうさまを言うと、
颯太のスマホが鳴った。
画面には大家さんの名前が表示される。
「あれ、こんな朝早くにどうしたんだろう。
ずっと帰ってないからなぁ。」
「ん?
大家さん。
部屋に帰らないから何かあったのかな。」
「ちょっと、電話出てくる。」
颯太は、誰から電話かを教えては
丁寧にベランダの方へ行く。
日々、何の疑いもなく、
過ごしているが、
美羽も半ば心配であった。
前に行ったときの家族写真は、
しっかり見ていたためだ。
信じていいのか
大事にしてくれていることは真実だと
思いたい。
「もしもし?
上原です。
どうかしましたか?」
『上原さん?!
今、どちらにいたの?
あなたの家の前にたぶん、あなたのお子さん?
ずっと座って動かないのよ。
どうにかしてちょうだい。
声かけても何も話してくれないから。』
「え?!
嘘、そうなんですか。
すぐ、行きますから。
そう、伝えててください。」
状況を聞くと颯太は驚いた表情で、
ベランダから部屋の中に入ってきた。
「どうだった?
大丈夫?」
「えっと…。
なんか、部屋の水道管から
水が漏れてるって。
様子見てくるわ。
あと、なんだっけ、夕飯、
仕事終わりに行くって
話は美羽が決めていいよ。
ラインに行きたい場所送って。
ごめん。出るわ。」
慌ただしいそうにジャケットを羽織ると、
荷物を持って玄関の方へ行く。
「あ、うん。
わかった。気をつけて。」
手を振って別れを告ぐ。
急いで話して、慌ただしく動くため、
見送ることしかできなかった。
急に部屋が寂しくなった。
サンキャッチャーが天井を揺れている。
食べ終えた食器を洗い終えて、
頭痛薬を飲んだ。
満月が近いせいか、生理痛がひどかった。
何だか、ざわざわと胸騒ぎがした。
気のせいだろうと思い、
美羽は、バックを持っては、
いつも通りに会社に向かった。
バックの中身をもう一度確認してから
ハイヒールを履いた。
また今日も会社に行かなくてはならないかと
ふとため息をつく。
好きな仕事をしているはずなのに、
それでも、毎日同じ場所に行くのは
時々、億劫に感じることもある。
人間の性か。
満員電車に乗っては、
ぎゅーぎゅーの人混みの中の
街を歩いて行く。
それだけで息切れするときもある。
神経使ってるんだ。
人と人が話すことなく
過ごすということに。
楽しいことを考えないと
それだけで
真っ暗闇に吸い込まれてしまう。
スマホを開いては、小説や漫画を
スワイプして、ながめる。
それでも、心落ち着かないときは、
電車から見える景色を眺めるが、
人が多くてそれどころではない。
人間観察しては、中国人観光客は
何と話してるのか考察するしかないのか。
美羽は混沌とした毎日過ごす中で、
颯太がいて
幾分、心穏やかになってきた。
スマホの充電も2割を切ることが
少なくなった。
まだミステリアスで
謎が解けない部分が多いが、
それも含めて、楽しむ努力をしていた。
◇◇◇
出勤前に颯太は、
自分のアパートへと
駆け出した。
大家に言われて、
部屋の前に娘がいると
聞かされていた。
案の定、キャップ帽を深くかぶって、
キャリーバックを横に、
紬が、颯太のアパートの前に
しゃがんでずっと待っていた。
汗をかきつつ、
やっとの想いで着くとすぐに
どんっと颯太の胸に飛び込んできた。
「パパ!!!」
「紬、なんで
ここに1人でいるの?!」
颯太は、大きな荷物を1人で運んで
ここに来るには相当な体力を要したのではと
紬を心配した。
まだ小学2年生。
九九を覚えたばかりの7歳。
こんな小さな体で、
埼玉から東京のここに
来るとは思えなかった。
紬の頭をなでては、部屋の中へと誘導した。