愛の充電器がほしい
第27話
「まゆちゃん!
そこ違う、ジャンプ。」
「え?こう?」
紬と颯太の住むアパートの
大家のまゆみは、
アクションゲームを一緒に
やっていた。
かなり馴染んでいる。
「もう、わからないよ。
ちょっと、目疲れちゃったから
休むね。」
「仕方ないなぁ。
5分休憩ね。」
「き、厳しいぃ。」
まゆみは、トイレへと歩き出す。
紬は、壁掛け時計を見て、
時間を確認する。
午後8時をすぎていることに
気づいた。
(そろそろ、いい感じの時間かな…。)
紬は、
テーブルに並べたお絵かきした道具や
折り紙などの遊び道具をテキパキと
片付けた。
まゆみがトイレから
まだ戻ってこないことを
チラチラと確認した。
大家のまゆみは、
70歳を超えたおばあちゃんで、
2年前に夫を亡くしてから
1人暮らししていた。
遠くに住む息子家族が盆と正月に
孫に会うくらいで楽しみは
それくらいだという。
小さいながらに
寂しそうだなと感じた紬だった。
ガチャとドアが開く音が聞こえた瞬間、
紬はラグマットの上で横になった。
「紬ちゃん、次は何して遊ぶの?
…ん?横になってどうしたの?
眠くなったのかな?」
「まゆちゃん、
わたし、お腹が超絶に痛い。
苦しい。」
「え?トイレ行く?」
「トイレじゃないみたい…。」
「……ん?お父さん呼べばいい?」
「やだ。」
「なんで?
お父さん嫌なの?」
紬はポケットに忍ばせておいたメモを
まゆみに差し出した。
「何これ。
電話番号?」
「そこの人に連絡してほしい。」
「誰?この人。」
「お父さんの代わりに看病してくれる人。」
「ふーん。
とにかく呼んで欲しいってこと?
私じゃ、病院連れて行けないからね。
腰痛いし、まぁ、いいや
電話すればいいのね。」
まゆみは、メモに書かれた電話番号に
電話した。
名前はわからない人にかけるのは
緊張するものだ。
コールが鳴って3回目で相手が出た。
「もしもし?
楠紬ちゃんのことで
電話したんですけど…。」
まゆみも適当に話し出す。
『もしもし、朝井美羽ですけども
どちら様ですか?』
「あら?あらら?
美羽ちゃん?
あれ、颯太さんの従妹じゃないの?」
まゆみは聞き覚えのある声で安心した。
『え?その声は、大家さん…?』
「そうなのよ。実はね、
今こういう状況でーーー。」
まゆみは颯太に頼まれて、
紬を預かっていることを話しては、
具合悪いから代わりに診てくれないかと
話した。
横で聞いていた紬は、
してやったりとした顔をしていた。
お腹など痛くない。
仮病を使って、美羽と交流を
とりたかった。
『そういうことだったんですね。
でも、勝手にやったら颯太さんに
怒られないですか?』
「大丈夫じゃない?
だって、あなた、颯太さんの
従妹なんでしょう。」
『…えぇ、まぁそうですけど。』
ごまかすのも必死だった。
「自宅の部屋に紬ちゃんと一緒に
待ってるから来てもらえる?」
『わかりました。
タクシーで向かうので、
そうですね、15分くらいで
着くと思います。』
「お願いね。」
まゆみはそういうと、電話を終えた。
紬は、痛がるふりをして、
横になっていた。
「ほら、紬ちゃん。
美羽おねえちゃん来るから、
お部屋に戻っておきましょう。
立てる?」
「…うん。
ありがとう、まゆちゃん。」
紬は、ゆっくりと起き上がって、
お腹をおさえながら、荷物を持った。
「よかったわね。
まだ8時だからお父さんは
もう少しかかりそうよね。
助かったわ。
おばあちゃんだから
あまり夜更かしできないし、
若い人にバトンタッチだね。」
早々に荷物を自宅に運ぶ紬は、
ソファに横になって待っていた。
まゆみは、空調の温度調整をした。
数分後、美羽は、
必要な荷物を持ってやってきた。
「こんばんは、お邪魔します。」
「あら、美羽ちゃん。
こんばんは。
待ってましたよ。
今の所、横になってたところなのよ。」
「大家さん、ありがとうございます。
紬ちゃん、大丈夫?
お腹痛いって言ってたから
可愛い湯たんぽ用意してたよ。
あと、飲み物と念のため市販薬を…。
まだ痛む?」
薬局で買ってきたであろうビニール袋を
がさがさとあさって取り出した。
白いふわふわの可愛いクマのイラストが
描かれた湯たんぽだった。
「…大丈夫。」
まだお湯の入ってない湯たんぽを
受け取っては恥ずかしそうに言う紬。
「ん?そう。
とりあえずお腹温かくしておこうか。
大家さん、あと私が見てますから
大丈夫ですよ。」
「あ、本当。
助かるわ。
あと、よろしくね。
んじゃぁね、紬ちゃん。」
「まゆちゃん、ありがとう。」
手を振って去って行く。
(まゆちゃん?!
大家さん、年の割に若い名前?!)
ソファに寝ている紬の横に
膝立ちになって、
様子を伺う。
「紬ちゃん、どの辺痛むの?」
「……もう、平気。
さっきはこのあたり痛かったけど
今はもう、大丈夫になった。」
みぞおちのところをおさえては、
痛いところをアピールした。
「そう。
調子良くなったならよかった。
一応、7歳でも飲める下痢止めとか
便秘薬とか買ってたから必要になったら
飲んでね。
風邪ではなさそうだよね。」
美羽は、紬の額に手を添えては
体温を確かめる。
平熱に近い。
手で触れられて、ドキッとする紬。
「来てくれて、ありがとう。
…美羽さん。」
「う、うん。
大丈夫、気にしないで。
ちょっと台所借りるね。」
美羽は台所に行き、
マグカップに粉を入れては
ポットのお湯を注いだ。
2人分のマグカップをトレイに乗せて、
テーブルに置いた。
「はい。風邪ではなかったけど、
予防になるから。
ビタミンCたっぷりのホットレモン。」
「酸っぱくないの?」
「うん、甘くて美味しいよ。
一緒に飲もう。」
初めて飲む紬は
恐る恐る匂いを嗅いでから
ごくんと飲んだ。
少し酸っぱかったが、
甘くて美味しかった。
「酸っぱいけど、美味しいね。」
「でしょう?
風邪予防にもなるから。」
沈黙が続いたが、温かくて
苦痛じゃなかった。
紬は美羽と過ごす時間が好きだった。
温かくて柔らかい優しい時間。
話も聞いてくれるし、
ご飯や飲み物も準備してくれる。
些細なことだけど嬉しいものだ。
そうしてる間にも
玄関のドアが開いた。
「ただいま〜。」
「パパー、おかえり。」
紬は、お腹痛かったのが
嘘のように駆け寄って颯太のそばによる。
「紬、もう遅いから
寝ててもいいんだぞ。」
頭を撫でながら対応する。
「だって、美羽さん来てくれたから
一緒に過ごしてたよ。」
颯太は、一瞬固まって
美羽の方を見る。
「……あ、ごめん。
大家さんから聞いてた。
紬のこと見ててくれてありがとう。」
「ううん。
勝手に引き受けてしまって
ごめんなさい。
余計なことしたかなって思って…
紬ちゃん、
お父さん帰ってきたことだし、
私そろそろ帰るね。」
颯太は、慌てて帰る美羽の腕をつかんで
引き止める。
「…夜遅いから、終電もないだろ?」
「え、タクシーあるし、大丈夫。」
美羽は颯太に
前回、拒絶されたことが印象に残っていて
帰らなければならないという気持ちが
強く出た。
「いいから、泊まって行きなよ。
夜は、危ないから。」
「え、やったー。
美羽さんと一緒に寝れるの?」
紬はまだ返事もしてない美羽の前で
喜んだ。
複雑な表情を浮かべる。
「え、でも、私は…。」
そう言いかけた横で颯太は、
目の前でバタンと倒れた。
昨夜の睡眠時間を削ったことが
今になって出たようだ。
スーツのまま、床に倒れている。
数秒後、いびきをかいては
寝始まってしまった。
とてもじゃないが、
声もかけても揺さぶっても
全く起きそうにない。
このまま帰るのは、あまりにも
紬がかわいそうだ。
「あ……。
もう…颯太さんったら。」
「パパ、お口がお酒臭い!」
「ねぇ?困ったお父さんね。」
美羽は、颯太の両肩を
ずるずると引きずって、
ソファに寝かした。
紬が喜んで、
お風呂に一緒に入ろうと
誘われては言われるがままに
やり過ごした。
紬に裸になった時に
ジロジロと見られては
恥ずかしかったが、
お風呂から寝かしつけるまで
終始ニコニコとしていたので
美羽も安堵した。
ベッドで美羽と紬は横に並んで
一緒に眠りについた。
そこ違う、ジャンプ。」
「え?こう?」
紬と颯太の住むアパートの
大家のまゆみは、
アクションゲームを一緒に
やっていた。
かなり馴染んでいる。
「もう、わからないよ。
ちょっと、目疲れちゃったから
休むね。」
「仕方ないなぁ。
5分休憩ね。」
「き、厳しいぃ。」
まゆみは、トイレへと歩き出す。
紬は、壁掛け時計を見て、
時間を確認する。
午後8時をすぎていることに
気づいた。
(そろそろ、いい感じの時間かな…。)
紬は、
テーブルに並べたお絵かきした道具や
折り紙などの遊び道具をテキパキと
片付けた。
まゆみがトイレから
まだ戻ってこないことを
チラチラと確認した。
大家のまゆみは、
70歳を超えたおばあちゃんで、
2年前に夫を亡くしてから
1人暮らししていた。
遠くに住む息子家族が盆と正月に
孫に会うくらいで楽しみは
それくらいだという。
小さいながらに
寂しそうだなと感じた紬だった。
ガチャとドアが開く音が聞こえた瞬間、
紬はラグマットの上で横になった。
「紬ちゃん、次は何して遊ぶの?
…ん?横になってどうしたの?
眠くなったのかな?」
「まゆちゃん、
わたし、お腹が超絶に痛い。
苦しい。」
「え?トイレ行く?」
「トイレじゃないみたい…。」
「……ん?お父さん呼べばいい?」
「やだ。」
「なんで?
お父さん嫌なの?」
紬はポケットに忍ばせておいたメモを
まゆみに差し出した。
「何これ。
電話番号?」
「そこの人に連絡してほしい。」
「誰?この人。」
「お父さんの代わりに看病してくれる人。」
「ふーん。
とにかく呼んで欲しいってこと?
私じゃ、病院連れて行けないからね。
腰痛いし、まぁ、いいや
電話すればいいのね。」
まゆみは、メモに書かれた電話番号に
電話した。
名前はわからない人にかけるのは
緊張するものだ。
コールが鳴って3回目で相手が出た。
「もしもし?
楠紬ちゃんのことで
電話したんですけど…。」
まゆみも適当に話し出す。
『もしもし、朝井美羽ですけども
どちら様ですか?』
「あら?あらら?
美羽ちゃん?
あれ、颯太さんの従妹じゃないの?」
まゆみは聞き覚えのある声で安心した。
『え?その声は、大家さん…?』
「そうなのよ。実はね、
今こういう状況でーーー。」
まゆみは颯太に頼まれて、
紬を預かっていることを話しては、
具合悪いから代わりに診てくれないかと
話した。
横で聞いていた紬は、
してやったりとした顔をしていた。
お腹など痛くない。
仮病を使って、美羽と交流を
とりたかった。
『そういうことだったんですね。
でも、勝手にやったら颯太さんに
怒られないですか?』
「大丈夫じゃない?
だって、あなた、颯太さんの
従妹なんでしょう。」
『…えぇ、まぁそうですけど。』
ごまかすのも必死だった。
「自宅の部屋に紬ちゃんと一緒に
待ってるから来てもらえる?」
『わかりました。
タクシーで向かうので、
そうですね、15分くらいで
着くと思います。』
「お願いね。」
まゆみはそういうと、電話を終えた。
紬は、痛がるふりをして、
横になっていた。
「ほら、紬ちゃん。
美羽おねえちゃん来るから、
お部屋に戻っておきましょう。
立てる?」
「…うん。
ありがとう、まゆちゃん。」
紬は、ゆっくりと起き上がって、
お腹をおさえながら、荷物を持った。
「よかったわね。
まだ8時だからお父さんは
もう少しかかりそうよね。
助かったわ。
おばあちゃんだから
あまり夜更かしできないし、
若い人にバトンタッチだね。」
早々に荷物を自宅に運ぶ紬は、
ソファに横になって待っていた。
まゆみは、空調の温度調整をした。
数分後、美羽は、
必要な荷物を持ってやってきた。
「こんばんは、お邪魔します。」
「あら、美羽ちゃん。
こんばんは。
待ってましたよ。
今の所、横になってたところなのよ。」
「大家さん、ありがとうございます。
紬ちゃん、大丈夫?
お腹痛いって言ってたから
可愛い湯たんぽ用意してたよ。
あと、飲み物と念のため市販薬を…。
まだ痛む?」
薬局で買ってきたであろうビニール袋を
がさがさとあさって取り出した。
白いふわふわの可愛いクマのイラストが
描かれた湯たんぽだった。
「…大丈夫。」
まだお湯の入ってない湯たんぽを
受け取っては恥ずかしそうに言う紬。
「ん?そう。
とりあえずお腹温かくしておこうか。
大家さん、あと私が見てますから
大丈夫ですよ。」
「あ、本当。
助かるわ。
あと、よろしくね。
んじゃぁね、紬ちゃん。」
「まゆちゃん、ありがとう。」
手を振って去って行く。
(まゆちゃん?!
大家さん、年の割に若い名前?!)
ソファに寝ている紬の横に
膝立ちになって、
様子を伺う。
「紬ちゃん、どの辺痛むの?」
「……もう、平気。
さっきはこのあたり痛かったけど
今はもう、大丈夫になった。」
みぞおちのところをおさえては、
痛いところをアピールした。
「そう。
調子良くなったならよかった。
一応、7歳でも飲める下痢止めとか
便秘薬とか買ってたから必要になったら
飲んでね。
風邪ではなさそうだよね。」
美羽は、紬の額に手を添えては
体温を確かめる。
平熱に近い。
手で触れられて、ドキッとする紬。
「来てくれて、ありがとう。
…美羽さん。」
「う、うん。
大丈夫、気にしないで。
ちょっと台所借りるね。」
美羽は台所に行き、
マグカップに粉を入れては
ポットのお湯を注いだ。
2人分のマグカップをトレイに乗せて、
テーブルに置いた。
「はい。風邪ではなかったけど、
予防になるから。
ビタミンCたっぷりのホットレモン。」
「酸っぱくないの?」
「うん、甘くて美味しいよ。
一緒に飲もう。」
初めて飲む紬は
恐る恐る匂いを嗅いでから
ごくんと飲んだ。
少し酸っぱかったが、
甘くて美味しかった。
「酸っぱいけど、美味しいね。」
「でしょう?
風邪予防にもなるから。」
沈黙が続いたが、温かくて
苦痛じゃなかった。
紬は美羽と過ごす時間が好きだった。
温かくて柔らかい優しい時間。
話も聞いてくれるし、
ご飯や飲み物も準備してくれる。
些細なことだけど嬉しいものだ。
そうしてる間にも
玄関のドアが開いた。
「ただいま〜。」
「パパー、おかえり。」
紬は、お腹痛かったのが
嘘のように駆け寄って颯太のそばによる。
「紬、もう遅いから
寝ててもいいんだぞ。」
頭を撫でながら対応する。
「だって、美羽さん来てくれたから
一緒に過ごしてたよ。」
颯太は、一瞬固まって
美羽の方を見る。
「……あ、ごめん。
大家さんから聞いてた。
紬のこと見ててくれてありがとう。」
「ううん。
勝手に引き受けてしまって
ごめんなさい。
余計なことしたかなって思って…
紬ちゃん、
お父さん帰ってきたことだし、
私そろそろ帰るね。」
颯太は、慌てて帰る美羽の腕をつかんで
引き止める。
「…夜遅いから、終電もないだろ?」
「え、タクシーあるし、大丈夫。」
美羽は颯太に
前回、拒絶されたことが印象に残っていて
帰らなければならないという気持ちが
強く出た。
「いいから、泊まって行きなよ。
夜は、危ないから。」
「え、やったー。
美羽さんと一緒に寝れるの?」
紬はまだ返事もしてない美羽の前で
喜んだ。
複雑な表情を浮かべる。
「え、でも、私は…。」
そう言いかけた横で颯太は、
目の前でバタンと倒れた。
昨夜の睡眠時間を削ったことが
今になって出たようだ。
スーツのまま、床に倒れている。
数秒後、いびきをかいては
寝始まってしまった。
とてもじゃないが、
声もかけても揺さぶっても
全く起きそうにない。
このまま帰るのは、あまりにも
紬がかわいそうだ。
「あ……。
もう…颯太さんったら。」
「パパ、お口がお酒臭い!」
「ねぇ?困ったお父さんね。」
美羽は、颯太の両肩を
ずるずると引きずって、
ソファに寝かした。
紬が喜んで、
お風呂に一緒に入ろうと
誘われては言われるがままに
やり過ごした。
紬に裸になった時に
ジロジロと見られては
恥ずかしかったが、
お風呂から寝かしつけるまで
終始ニコニコとしていたので
美羽も安堵した。
ベッドで美羽と紬は横に並んで
一緒に眠りについた。