振り返って、接吻
わたしの後ろをついて歩く人見知りだった幼い頃の由鶴に、彼のお母様が言った。
———ひとりで歩きなさい、りんちゃんだってずっと一緒にいられるわけじゃないんだから。
もちろん、子供に向けたそれに深い意味はない。わたしに頼りすぎちゃだめだよっていうだけのしつけ。
それなのに、当時から仏頂面だった由鶴は、珍しくもみんなの前で大泣きしてしまった。
りんちゃんとずっと一緒にいるもん!!って。今の彼を思うと、それはあまりにもかわいすぎる。まあ、正しくは、りんぢゃんどおおお、ずっどいっじょにい、いるもんんんん!って感じだったけど。ほら、泣いてたから。
よしよし、ごめんねゆづ、りんちゃんと仲良くするには泣いてちゃだめだよ。
慌てて謝るお母様と感情露わにわんわん泣き叫ぶ由鶴を眺めながら、幼いわたしはどうしようもなく嬉しかった。
もちろん、由鶴を慰めるポーズはとっていたけど、心の中では彼への独占欲がむくむくと育っていた。
ゆづ、わたしから離れたくないんだ。ああ、かわいい。