振り返って、接吻
慣れない快感をうまく逃せない宇田は、不器用に、俺の指の動きに合わせて気持ちよくなろうとしている。
「従順でかわいい」
「もう、ゆず、おねがいだから、」
ほんのり掠れたメロンソーダの声で、懇願するように上目遣いをする宇田。
口の中に突っ込んでいた唾液でぐちゃぐちゃの親指を出してあげる。その親指を俺が舐めると、彼女は顔を真っ赤にして「ちょっと、!」と焦った。
その親指で、わざと想像させるように、下肢からお腹に向かって、つーっと撫でてやる。
俺を欲しがってる宇田に対して、独占欲が満たされていくと同時に、むくむくと加虐心が湧いてしまう。
「ほんとにシていいの」
「今更きくの?」
「まだ宇田は純潔だよ、お嫁に行ける」
「由鶴とセックスしたらお嫁に行けないの?」
「そうだよ、俺のものにならないといけないからね」
じっとお互いを見つめ合いながら、声にできない言葉を送りあった。
お嫁になんて行かないでよ。
勝手にどこへも行かないで。
これからもずっと俺の目の前を歩いていて。
それで、たまに振り返って。
「っ、」
そして、宇田は俺を引き寄せて、くちびるをそっと重ねた。一瞬の出来事。
それが、宇田と俺の、初めてのキスだった。
「とっくにわたしは、由鶴のものだよ」
———くちびるのキスは、愛情のキス。
このとき世界は、たしかに、ふたりきりだった。