振り返って、接吻
それから、4月になって新入社員が入ってきたりした。新学期になって新しい自分になろうとする女の子は多いらしく、意外とこの時期は化粧品がよく売れる。つまり、また忙しくなっていた。
それに対して俺らの婚約報道は、すっかり落ち着きを見せていた。エンタメトピックスは当たり前に移り変わる。悪い報道ほど、目につくし耳に残るし、口から吐いてしまうものだな、としみじみ思う。
実家に帰って宇田との結婚の許可を貰ってきたりした。
どうしても政略結婚という形にしたいと言う宇田に、形式は構わないけどふたりは幸せになれるんだよね、とどちらの両親にも強く念を押された。
宇田は、俺の親にも自分の親にも力強く「由鶴を幸せにしてみせます」と明言していた。宇田がいれば何でもいい俺は黙って頷いておいた。自分の親には怒られた。
それから俺は、こっそりと婚姻届を書いた。宇田の書くべき欄以外は埋めておいたから、あとで渡すつもり。
だってほら、あいつの誕生日に籍入れるって約束したから。