振り返って、接吻
そして。
「おおおおおおお!」
これは、宇田が拍手するのも無理はない。
箱から出て来たのは、綺麗に飾り付けられたホールケーキだった。
純白の生クリームによってすっきりとした印象だけど、表面に描かれている絵が茅根らしい。赤い花弁がひらひらと飾られているのが美しい。『Happy Birthday RINKO』と口紅の形のお菓子が描いている。
どこで買って来たんだろう、すごくおしゃれなケーキだ。センスが良くて、茅根らしくて宇田らしい。
社長本人は奇声を発しながら大喜びしていて、茅根のおかげっていうのはくやしいけど、やっぱりその姿はけっこう可愛いなと思ってしまった。
「社長、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう、すごくうれしい」
「ふふ、喜んでもらえて良かったです」
そうして、ふたりは写真撮影なんかを始めた。キメてる宇田をかしゃかしゃかしゃ。しゃしゃしゃしゃしゃ。連写なら動画でいいだろ。
俺もスマホを出して、こっそりふたりの様子を撮影した。俺は動画で。ケーキを囲んできゃっきゃとはしゃぐ大の大人は、気味が悪かった。
それから、茅根はどこからか、チャッカマンを取り出した。そして、これまたどこからか出てきた2つのロウソクをぶすりと躊躇なく洒落たケーキの中心にぶっ刺した。
「にじゅう、きゅうか、、」
「ラスト20代ですよ」
「どうりでお肌も曲がり角なわけよ、、」
青いロウソクは2、黄色のロウソクは9の数字型。俺は、カーテンを閉めて部屋の明かりを消すために立ち上がった。茅根はカチカチとチャッカマンを点けて、ロウソクに火をつける。