振り返って、接吻
幼馴染の深月由鶴は、人見知りで無表情だし、みんなと親しくするのが下手な子どもだった。
家柄と美貌のおかげで周囲は彼を一目置いていたものの、明るく笑顔でみんなと仲良くなれる快活さは無かったように思う。
同級生の茅根とは仲が良さそうに見えたけど、茅根はみんなの中心でにこにこしている典型的な人気者タイプだ。
まあ、彼も彼で柔らかい微笑みでみんなを緩やかに統治していく狂気があったけど、それについてはここでは触れないでおく。そういう闇属性が由鶴と仲良くなったきっかけだろうし。
とにかく、幼い頃の由鶴は、わたしにしか懐いていなかったのだ。それがかわいくて、どうしようもない優越感だった。
天使のような美少年の由鶴に近づこうとする者は、老若男女問わずとにかく多かった。それが尚更、彼の人見知りに拍車をかけてしまったのかもしれない。
ほんとうに、わたしだけ。
みんなが欲しがる綺麗な由鶴は、わたしがいないと声を上げて笑うこともしない。
ゆづの面倒見てあげる!なんて偉そうなことを言っていた可愛かった幼い頃のわたしは、成長とともに、大切な幼馴染との向き合い方を間違えてしまった。