振り返って、接吻
由鶴は、落ち着いているせいで大人びて見えるけど、心は純粋でかわいらしい中学生だった。
アイスクリーム屋さんでわたしが好きな味を真似して選んだり、わたしが由鶴の教室に会いに行くと涼しい表情を崩して砂糖菓子みたいに微笑んだり。
かわいい、わたしだけの由鶴。
だけど、わたしだって、ずーーーっと一日中、由鶴に構ってあげることはできなくなってきた。女の子同士の会話も遊びもしたいし、何より、由鶴といっしょにいると彼と自分を比較してしまうのだ。
だから、比べなくて済む他の同級生と過ごすほうが、どうしても楽に感じてしまった。
すると、いつのまにか、人見知りの由鶴にも少しずつ友人が増えていた。社交性が低いと思っていた美少年は、しっかりと男の子たちの輪の中で笑っていた。
「深月の妹ってちょー美人だよな!いいなー!」
「知らないよ、妹だし」
「てか、オマエの妹が美人じゃなかったら血の繋がり疑うわ」
「由鶴くんの妹って、朝からめちゃくちゃハイテンションだよ?」
「血の繋がり疑うわ!!!!」
「てか、なんで茅根が朝の深月妹を知ってるんだよ!」
由鶴が発する言葉は少ないけど、会話は由鶴中心に回っていく。気怠げなポーズをとっているけど、楽しそうな幼馴染が目に入って、わたしの心の中はもやもやした。
由鶴と仲の良い茅根が、「こないだ由鶴くんの家泊まったら、朝ごはん一緒だっただけ」と笑って言う。わたしだって、ゆづの妹によく会うし。可愛がってもらってるもん。