振り返って、接吻
そんな負の感情にぐるぐると巻きつかれたわたしを知ってか知らずか、彼は澄み切った黒い瞳でわたしを見つめた。


「俺はオマエが1位をとったら毎回やっぱりすごいなあって感心するし、幼馴染として勝手に鼻が高くなる。

だから、俺が1位になって、宇田にもその気持ちを味わってほしかったんだけど、」



ああ、この綺麗な子は、本当にわたしのことしか見えていないんだ。

定期試験の結果なんて心底どうでもいいはずなのに、わたしが1位をとったら嬉しくなるんだ。わたしに喜んでもらうために、試験勉強をしたんだ。


彼は困ったように眉根を寄せて、弱々しく笑った。


「オマエに嫌われるくらいなら、1位なんてとらなきゃよかった」

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