振り返って、接吻
そんな最低な思考をどう思っているのかわからないけど、彼は小さく苦笑した。
「俺の幸せなんて、ぜんぶオマエ次第だよ」
この関係がどこまでも真っ直ぐで、ひどく歪んだものであることに気付いたわたしは、同時に、もう修正はできないと知ってしまった。
「わたしって、由鶴にとってそんなに価値のある人間?」
「価値とかじゃなくて、空気とか水より重要だね」
「それじゃあ、わたしと一生離れられないね?」
冗談のつもりで言ったのに、彼は真顔で「うん、そうだよ」と答えた。
「オマエが俺を嫌いでも、俺は離れてあげられない」
わたしの右手を取った由鶴は、自分の冷たい左手を、温度を馴染ませるみたいにゆるく絡めた。