振り返って、接吻
茜色に染まりつつある生徒会室は、ふたりの呼吸の音が響く。
外では部活動に励む生徒たちが大声で頑張っているのだろうけど、無駄に防音設備まで整ったここは静まり返っていた。
「宇田、なに考えてるの」
わたしのことを分かってくれない幼馴染が、分かろうと歩み寄る。その器用な不器用さが愛おしくて、わたしは正直に答えた。
「ゆづに殺されることを考えてたよ」
由鶴はわたしに殺されたいらしいけど、わたしも同じかもって考えていた。
すると由鶴はちょっと悩んで見せて、
「俺が宇田を殺したら、俺より宇田が先に死んじゃうってこと?」
「まあ、そうなるね」
「嫌だよ、そんなの」
うちの幼馴染は、どうしようもなく可愛い。ちょっと拗ねたのを隠すように顔を、体育座りの膝に埋める由鶴。かわいすぎて抱きしめてあげたい。
「由鶴はわたしのこと殺したくならない?」
「いや、ふつうになる」
「なるの?!」
「大人になったら、たぶんもっと殺したいってなると思うし」
相変わらず物騒なことを言う由鶴は、ゆったりと立ち上がった。
つられてわたしも立ち上がるけど、人ひとり分くらいしか隙間を開けずに立つものだから、わたしは見上げないと目が合わない。
わたしよりも頭ひとつぶんくらい背が高い彼は、ちょうどいまが成長期らしい。由鶴はぐんぐん伸びているから、僅かに成長しているわたしとの差が開いていく。